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2025年から専業主婦の年金廃止?家計や生活への影響どんなことがある?【前編】

    

こんにちは、編集者Mです。
専業主婦の年金が廃止されるかもしれないという話を耳にしたことはありますか?将来の生活はどうなるの、なんて不安になりますよね。じつは、専業主婦の年金が廃止されるという明確な決定はまだありません。しかし、今後の制度改革や廃止の可能性を考えると、今から老後に向けて準備をしておくことは重要です。
今回は専業主婦の年金制度に関する政府の動向や、老後に安心して暮らすための対策について詳しく解説します。将来の年金に不安を感じる専業主婦の方々にとって、参考になる情報を提供できれば幸いです。

1.そもそも本当に専業主婦・主夫の年金って廃止されるの?

専業主婦の年金が廃止されるという決定は、まだ下されていません。ただし、厚生労働省では年金制度の見直しに関する検討が行われており、将来的には廃止される可能性もあります。
日本は少子高齢化が進行しており、1947年から1949年にかけて生まれた約800万人の団塊世代が2025年に75歳以上となり、超高齢化社会に突入します。この年齢層の人口が全人口の約18%を占めることで、高齢者向けの社会保障費がさらに増加することが予想されています。
このような社会の変化を考慮すると、今後は現在の働く世代の負担を軽くするために、社会保険の適用範囲を拡大することが検討されています。2025年には、毎5年ごとの年金制度の見直しが予定されています。その際には、専業主婦の年金についても改正や廃止が議論される可能性があります。したがって、今後の動向には注意が必要ですが、政府や関係機関の方針や情報にも耳を傾けていきましょう。

2. 専業主婦・主夫の年金はどのようになっている?

専業主婦や専業主夫の年金とは、一般的に会社員や公務員などの収入に依存せず、家庭や子育てに専念している方々が加入することができる年金制度です。
これは、第2号被保険者である配偶者に扶養されている方々が、第3号被保険者として加入することができます。具体的には、国民年金は20歳以上60歳未満の方が加入することが義務づけられており、被保険者は以下のように大きくは3つのカテゴリーに分けられています。

第1号被保険者
自営業者や個人事業主など、自らの収入に基づいて国民年金を支払う方々が該当します。これには農業者や商店主などが含まれます。

第2号被保険者
会社員や公務員など、雇用者から給与を得る方々が該当します。彼らは雇用主との間で所定の掛け金を支払い、国民年金に加入します。

第3号被保険者
配偶者や家族の扶養者となっており、第2号被保険者によって扶養されている方々がこのカテゴリーに属します。専業主婦や専業主夫が一般的な例です。

第3号被保険者には、年収が130万円未満でかつ第2号被保険者の年収の2分の1以下の方が該当します。そのため、専業主婦や専業主夫だけでなく、定期的な収入が一定以下のアルバイトやパート勤務の方もこのカテゴリーに含まれます。第3号被保険者に該当すると、国民年金の保険料を自分で支払う必要はありません。

専業主婦の年金制度は、1985年に導入されました。この制度は、従来は夫が仕事をし、妻が専業主婦として家庭を支えるという考え方が一般的であった時代に生まれました。以前は、夫名義で夫婦2人分の年金が支給され、専業主婦の国民年金への加入は任意でした。しかし、離婚などで年金を受け取れないという問題が浮上しました。

このような不整合を解消するために、政府は専業主婦を第3号被保険者の適用対象に加え、年金を受け取れる仕組みを整えました。その結果、専業主婦も自身の社会保障の一環として年金を受け取ることが可能になりました。

3.専業主婦や専業主夫の年金制度である「第3号被保険者」廃止が検討される背景とは?

専業主婦の年金制度は、単身世帯や共働き世帯との公平性が欠けているとの指摘や、専業主婦として働きにくい状況を生み出しているとの懸念から、その廃止が検討されています。こうした背景に基づき、なぜ専業主婦の年金制度が廃止される可能性があるのか、その詳細を丁寧に見ていきましょう。

3-1.『年収の壁』これによる労働時間の調整

専業主婦の年金制度の廃止が検討されている背景には、多くの方が「年収の壁」という課題に直面し、それによって労働時間を調整することが挙げられます。この状況は、人手不足という問題を引き起こしています。
『年収の壁』とは、税金や社会保険のボーダーラインのことです。具体的には、年収が一定のラインを超えると、税金や社会保険料の負担が増え、手取り額が減少する可能性があります。現行の社会保険制度では、例えば会社員の配偶者などで一定の収入がない人は被扶養者(第3号被保険者)として社会保険料を負担していません。そのため、年収の壁を超えないように働き控えをする方が多いのです。

3-2.年収の壁には、いくつかのポイントがあります

まず、100万円の壁では、収入が100万円を超えると住民税が課されます。その後、103万円を超えると所得税の支払いが始まります。さらに、106万円の壁では、厚生年金や健康保険への加入が義務付けられます。そして、130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、国民年金と健康保険への加入が義務付けられます。この壁を超えると、150万円の壁では配偶者特別控除が減少し始め、201万円を超えると完全になくなります。

3-3.税制別での年収の壁のポイント

まず、収入が100万円を超えると、住民税が課されます。さらに103万円を超えると、所得税の支払いが始まります。次に、収入が106万円を超えると、厚生年金や健康保険への加入が義務付けられます。収入が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、国民年金と健康保険への加入が義務付けられます。さらに、収入が150万円を超えると、配偶者控除が減少し始め、201万円を超えると完全になくなります。
夫や妻の扶養に入っている場合、アルバイトやパートで働く配偶者の年収が103万円以下であれば、配偶者控除の対象となり、夫や妻(主に高収入者)の所得税や住民税が軽減されます。しかし、配偶者の年収が103万円を超えると、配偶者控除は適用されなくなり、代わりに配偶者特別控除が適用される可能性があります。この特別控除は、配偶者の年収が201.6万円未満の場合に適用され、所得税や住民税の軽減が受けられます。
さらに、夫や妻の年収が高い場合、配偶者の収入が一定額を超えると所得税や住民税が増額される可能性があります。したがって、家計全体の収入や税金の支払いに影響する配偶者の収入には、慎重に対処することが重要です。

3-4.社会保険上の年収の壁のポイント

まず、年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、国民年金や健康保険への加入が義務付けられます。さらに、配偶者の年収が201.6万円を超えると、配偶者特別控除が適用されなくなり、自身での社会保険料の負担が発生します。このように、収入が一定の水準を超えると、社会保険への加入や控除の対象が変化するため、家計の計画において注意が必要です。
社会保険加入のボーダーラインには、106万円と130万円の壁が設けられています。まず、配偶者の年収が約106万円以上あると、勤務先の社会保険への加入義務が発生します。そして、配偶者の年収が130万円を超えると、自身で社会保険料を納めることが求められ、扶養から外れることになります。このため、扶養から外れないように労働時間を調整し、働き控えをする方が増加しています。
政府は、この働き控えの問題に対処するため、2023年10月から一時的な収入の増加によって年収130万円を超えてしまった連続2年間に限り、扶養から外れないルールを導入しました。この制度により、雇用主が一時的な収入増加であることを証明すれば、扶養に入り続けられることとなります。ただし、この証明がない場合は、扶養から外れてしまう可能性があるため、注意が必要です。
なお、106万円の壁に該当する勤務先で「社会保険へ加入義務が発生」するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

【社会保険加入の要件】

  • 従業員数が101人以上の会社に勤務していること
  • 月給が8万8,000円以上(年収106万円以上)であること
  • 所定労働時間が週20時間以上であること
  • 雇用期間の見込みが2ヵ月を超えること
  • 学生ではないこと

なお、このうちの一つである勤務先の従業員数は、2024年10月から「101人以上」から「51人以上」へ変更されます。今後も加入対象範囲の拡大が予測され、社会保険に加入しなければならない方がさらに増えることが考えられます。そのため、制度の改正内容や影響について確認しておくことが重要です。

社会保険料には、厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険などが含まれます。これらの保険に加入することで、様々なリスクに備えることができます。また、年収の壁を越えて社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少することがあるかもしれませんが、それだけで悪いことばかりではありません。
例えば、社会保険に加入することで、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けることができます。これは、万が一の際に経済的な負担を軽減するために役立ちます。また、将来的には年金を受け取る権利も得られます。加入すればするほど将来の年金額が増えるので、積極的に加入することは賢明です。このように、社会保険に加入することで将来の安心や給付の受給など、さまざまなメリットがあることを覚えておきましょう。

■前半のまとめ

最初に申し上げたように、政府が検討している2025年から専業主婦の年金廃止の可能性により、家計への影響は大きく変わる可能性があります。専業主婦の方々は、将来の年金受給に不安を感じるかもしれません。また、家計における収入源の変化や老後の生活設計の見直しが必要となります。しかし、これを機に家族全体での収入や老後の準備について考える機会ともなります。後編でも引き続き、その準備のための解説をお届けします。