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2024年の展望|為替相場の見通しやそれによる生活への影響を考えてみよう

    

こんにちは、編集者Mです。2023年(令和5年)末まで、長期的に強烈な円安が続きました。ここ1年で急激に上昇した物価情勢には円安・円安の影響もあるため、気になる方も多いと思います。今回は、2023年から2024年にかけての円相場の見通しや、それによる影響を説明します。今後の生活に備えておくためにも知識を得ておきましょう。

1. 2023年の円安。原因は何だったのか

為替相場は、国内通貨と外国通貨の交換比率を示すものであり、私たちの生活に大きな影響を与えています。最近までの為替市場では、円が他の通貨に対して相対的に低い値で取引され、特にドルが高値を維持していました。円安・ドル高の状態が持続した背景には、さまざまな要因が影響しています。まず、円安の原因について確認してみましょう。

1-1. 円安の始まったタイミング

そもそもの円安の始まりは2022年(令和4年)3月中旬頃で、この時点から先ごろの2023年秋下旬まで続きました。3月上旬までの為替相場は1ドル115円前後で推移していましたが、その後円安の傾向が強まり、4月下旬にはおおよそ20年ぶりに1ドル131円台に達しました。円安はその後も進行し、10月には一時1ドル152円近くまで上昇しました。その後一部円高に振れたものの、2022年(令和4年)年末までにもなお130円台で推移し、円安の状況が続いていました。2023年(令和5年)の前半においても、円安の傾向が収まる気配はありません。2023年に入って最初は一時1ドル127円台で円高に振れましたが、その後再び円安が進行し、5月末には1ドル140円台に達し、その後も1ドル140円台での推移が続きました。

1-2. 2023年(令和5年)後半においての為替相場状況

2023年秋、円安が注目され始めてから1年以上が経ち、初期の状況と比較すると、円安がさらに進行しています。2023年8月には、一時的に為替相場が1ドル147円台に達しました。9月に入っても、同様の水準での為替相場が続いています。
11月に入り、ドル円相場では初めは米国の雇用統計が不振で、それに伴いドルが一時149円前半まで下落し、円が上昇しました。中旬には、パウエルFRB議長がタカ派的な発言をしたことで、ドルが一時151円台後半まで上昇しましたが、その後米国の消費者物価指数(CPI)が市場の予想を下回ったことなどから、早期の利下げ観測が高まり、月末にかけては146円台後半までドルが下落し、円が上昇しました。12月に入ると、植田総裁の発言を受けて日銀が政策を修正する可能性が高まり、その結果、一時141円台後半まで円が急激に上昇しました。

1-2. 円安の主な要因

円安の主な要因は、日本とアメリカの金利差に起因しています。日米両国ともに長らく金融緩和政策を取ってきましたが、2022年(令和4年)3月にアメリカが金融引き締めに転じたことが大きな影響を与えました。金融緩和とは、政策金利の引き下げや資産の買い入れなどによって、経済に資金を供給し、経済活動の拡大を促進する政策です。経済が不況に陥った際、国は金融緩和を実施して景気浮揚を図ります。
金融引き締めは、景気の過熱や物価上昇を抑制するために採用される政策です。この手法では、政策金利を引き上げたり、資金供給量を減らしたりして、資金の入手が難しくなり、経済活動が緩やかになるよう調整されます。この金利差が開いたことにより、投資家の間で円を売ってドルを買う傾向が高まり、円安が進行することとなりました。

2. 2024年は円高に転換する?それとも円安がやはり続いてゆくのか

結論から言いますと、円安が続くのか、それとも円高に転換するのかを予測することは難しいです。将来の為替相場の動向については、様々な専門家が意見を述べています。経済理論、統計、政治、経済など多岐にわたる要因が相場に影響を与えますが、これらだけで確実に予測をすることは不可能です。
為替相場は市場に参加する多くの人々の期待にも影響されます。いわば、人々の予想の集合体のようなものであり、そのため為替相場の動きを正確に予測することができないためです。また、円安が続いている状況でも、個別の要因によって円高に振れることもあります。将来の見通しを把握する際には、個別の要因に左右されるよりも、円安の大きな流れがどれくらい続くかに注目することが重要です。

3.  円安が続くと予想する専門家も多い

円安が来年春頃まで続く可能性も検討されています。現在の円安の主因は、アメリカが推進している金融引き締め政策です。為替相場の大きな動きを予測するには、アメリカの金融政策に重点を置くことが必要です。
アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は、2022年3月以降、各会合での利上げを継続してきました。2023年6月には利上げを見送りましたが、7月には再び利上げを行いました。アメリカの利上げがいつまで続くかは、為替相場の動向に大きな影響を与えてくるでしょう。アメリカの利上げについては、2024年以降にFRBが利下げに転じる可能性も言われています。ただし、最も早くても2024年春頃まで円安が続く見込みです。今後の情報に敏感になっておくことが肝要です。

4. 2024年、円安が収束を迎え、円高にふれる可能性はどうなのか

一方で円高に転換する可能性を示唆する専門家も多く検討されています。2023年には対ドルの円相場が予想以上に円安・ドル高の方向に進んできました。しかし、円相場が反対方向に振れる可能性も徐々に高まっています。植田日銀総裁の発言がきっかけで、円相場は一時的に1ドル=141円台まで上昇し、市場では円安修正の要因が模索されているように見受けられます。
経済ファンダメンタルズの視点から円相場を考えると、円高・ドル安の要因と円安・ドル高の要因が双方存在しますが、相対的に後者の方が優勢でした。2024年には、この構図が変わり、円高・ドル安の方向に振れる可能性が高まりそうです。

ただし、経済成長率が鈍化し、2024年には先行きが不透明な状況になる可能性があります。そのため、円相場が現在よりも円安・ドル高の方向に振れたり、円安・ドル高水準が予想以上に長期間続いたりする可能性も考慮する必要があります。
逆に、経済・物価・金利の動向によっては急激に円高・ドル安に転じる可能性もあります。2024年の円相場では、リスクが両方向で発生する確率が2023年よりも高くなる可能性があります。

5.  円安が続いた場合の影響と対策

円安が今後もしばらく続くと想定した場合、生活への影響を理解し、適切な対策を講じていくことが重要です。物価上昇が続くとインフレが進み、お金の価値が減少します。このため、預貯金が目減りする可能性があります。そのリスクを踏まえ、投資信託などのインフレに強い金融商品を検討することが重要です。

5-1. 輸入物価の上昇と円安

円安の状況においては海外からの物品輸入が高くなります。日本はエネルギーや食材など多岐にわたる商品を海外から調達しており、円安により輸入コストが上昇すれば、企業は製品価格を引き上げざるを得ません。その結果、円安が続くと日本では物価上昇が顕著になります。

5-2. 家計の見直しと資産運用への対策

物価上昇への対策としては、まず家計の見直しが不可欠です。通信費や保険料などの固定費の中で削減できる項目がないかを検討してみましょう。

5-3. 資産保護の観点

円安時には資産保護が重要です。円安になると円の価値が下がり、円建ての預金が減少します。これに対して、外貨預金では為替差益が得られます。例えば、1ドル110円の時にドルに換えて預け、1ドル140円の時に円に戻せば、1ドルあたり30円の利益が得られます。
円安が続く可能性に備えて、外貨建ての資産を持つことも一つの対策です。外貨預金は国内の銀行でも手軽に利用できます。また、分散投資が有益です。為替相場は予測通りに動かないことがあります。資産を一つの通貨に偏らせると、円高時に損失が発生する可能性があります。資産運用を検討する場合は、異なるタイプの商品に分散投資することがリスク管理に効果的です。

5.  個人においては「円高」のほうがよく「円安」はデメリットが多い

物価が上昇し続けると、インフレが進み、通貨の価値が減少します。この結果、預金や貯蓄が減少する可能性があります。このリスクを考慮して、インフレに対応できる投資信託などの金融商品を検討することが重要です。国や企業を総合的に見ると、円安や円高にはそれぞれメリットとデメリットが存在し、どちらが優れているとも一概には言えません。重要なのは、円安・円高のどちらになっても、適切なリスク管理策を考えておくことです。

6. 2024年の物価動向と展望

2024年の物価動向を考察すると、4月末まで続いてきた電気・ガス・ガソリン代の価格抑制策が終了することで、特に5月以降に物価が上昇する可能性が高まります。ただし、現在では原油価格が大きく下がっていることもあり、これがインフレ率を抑制する一因となるでしょう。また、世界経済の減速が予測されているため、エネルギー価格の低下も物価上昇を和らげるかもしれません。
昨年10月には政府が小麦の価格を11.1%引き下げ、中国への輸入停止があったことから、食料品の急激な値上げは回避される見込みです。これまで、円安為替が物価上昇の主因となってきましたが、24年以降は円高に向かう可能性もあります。米国のインフレ率も減速すると予想され、FRBも景気や物価の状況に応じて、24年前半には利下げに転じる可能性があります。

7. まとめ

日本の貿易赤字も、輸入一次産品価格の安定や輸出の回復により縮小に向かっています。サービス収支もインバウンド消費の増加などで縮小しており、これが円高の圧力となる可能性があります。さらに、日銀の金融政策の修正やマイナス金利の解除も円高の要因となる可能性があります。
最新のエコノミストコンセンサスによれば、今後も消費者物価は推移すると仮定すると、23年のインフレ率+3.1%に対して24年は+2.4%に低下する見込みです。しかし、家計の負担増加は23年に前年比で+3.7万円(4人家族で+14.9万円)増加し、24年は+2.9万円(4人家族で+11.4万円)増加する見通しです。
これに対処するためには、定額減税4万円で24年の物価上昇による負担分を賄う計算になりますが、予想以上のインフレ率の上昇があれば、定額減税だけでは賄えなくなる可能性もありますので、注意が必要です。