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【お金の教養】新紙幣に更新される理由と描かれる人物の意外な選定理由

    

こんにちは、編集者Mです。財務省と日本銀行は2023年6月28日、新しい日本銀行券について、2024年7月前半を目途に発行を開始すると発表しました。具体的な発行開始日については、所要の準備が整った段階で、財務省告示によって公示されるようです。
なお、現在発行されている日本銀行券であるお金、紙幣は、新紙幣が発行された後も引き続き使うことができます。「現行の日本銀行券が使えなくなる」などを騙った詐欺行為・振り込め詐欺などにはご注意ください。

日本の紙幣は1885年・明治18年に第1号が誕生しました。以降、現在まで53種類の紙幣が発行されています。最近ではざっくり20年に1回、新紙幣の発行が行われています。紙幣の刷新を行う大きな理由は、偽造防止です。今回発行を予定されている新紙幣も、さまざまな最新技術を活用し、偽造防止に努めています。また、一万円札・五千円札・千円札、それぞれのデザインと描かれる肖像画が変更され、時代に添った紙幣になっています。ちなみに流通前から紙幣の柄などを見ることができるってご存知でしたか?現在、新紙幣の見本は、貨幣博物館や全国32カ所の日本銀行の支店で確認することができます。今回は、なぜ新紙幣に更新する必要があるのか、また描かれる人物や功績、選ばれた理由などを学びましょう。

1. 2019年4月、日本政府より新紙幣導入が発表されました

2019年の4月、日本政府は新紙幣を導入、それに伴って紙幣のデザインを一新すると発表しました。今回は10000円・5000円・1000円の紙幣です。併せてお札にデザインされる人物も新たに変わります。(余談ですが結局2000円札は定着しませんでしたね…)

1-1. いつから新紙幣になる?

今回刷新される紙幣は、2024年7月の発行を予定されています。現在は流通の準備段階だそうで、その見本は貨幣博物館や全国32カ所の日本銀行の支店で確認することができます。紙幣のデザインが一新されるのはだいたい20年に一度。前回は2004年でした。ちなみにデザインを一新するとの発表は2019年。そして具体的に新紙幣が発行するのは2024年と5年の間があります。これにも理由があり、新紙幣を印刷できる準備が整うまで2年半、あわせて公的な場所やATMで使用できるように民間企業の準備期間として2年半が必要であるためです。

1-2. どうしてお札を新しくするの?
紙幣を一新する主な理由として、偽造防止対策の強化があります。余談ですが、新紙幣について「デザイナー」はいないそうで、新紙幣をデザインするにあたっては『工芸官』と呼ばれる国家公務員の専門職員がコンピュータシステムを用いて描くそうですデザインの最終決定は、財務大臣の認可によって決定します。工芸官は紙幣の印刷を行う印刷局に在籍していて、約10名ほどだそうです。さて、今回の新紙幣ではどのような技術での偽造防止対策があるのでしょうか、ご紹介します。

1-2-1. 高精細すき入れ

現在の紙幣は、肖像のすかしが入っています。新紙幣では、肖像の背景にも高精細のすき入れがあります。すき入れとは、紙の厚さを繊細に変えることで表現される偽造防止技術です。新紙幣は肖像の周囲に緻密な画線で構成される連続模様が施されています。

1-2-2. 3Dホログラム

ホログラムとは、レーザービームを使って立体画像を印刷したものです。紙幣だけでなく、クレジットカードなどの偽造防止にも使われています。今回の新紙幣では、印刷された肖像が三次元で浮かび上がり、見る角度によって人物の向きが変化して見えるというビックリな3D ホログラムの技術を取り入れています。この技術は世界でも最先端のものとなっており、紙幣への採用は世界でも日本が初めてである取り組みです。また、お札によって型が違い、一万円札と五千円札はストライプ型ホログラムを採用。千円札にはパッチ型ホログラムを採用しています。どう違って見えるのか、手に取るのが楽しみですね。

1-2-3. 潜像模様

紙幣を傾けると、表面に『10000』『5000』『1000』の数字が浮かび上がり、裏面には『NIPPON』と文字が浮かび上がる技術のことを潜像模様と呼びます。現在の紙幣でも用いられている技術であり、新紙幣でも同じく用いられています。

1-2-4. パールインキ

紙幣を傾けてみると、左右両端の余白にピンク色の光沢が浮かび上がるインク技術のことです。紙幣を傾けることで目視することができます。切手などでも使われています。現在の紙幣でも用いられている技術であり、新紙幣でも同じく用いられています。

1-2-5. マイクロ文字

マイクロ文字は、微細なサイズで描かれている文字のことです。お札を複写コピーすることは犯罪ですが、現在のスーパーカラー複写機でコピーしたとしてもはっきり写すことが難しいことから、偽造防止技術として用いられています。新紙幣には、これまでと同じく『NIPPONGINKO』の文字が印刷されています。これは拡大鏡を使ってどうにか確認できるレベルの文字サイズです。マイクロ文字も切手などで偽造防止技術として用いられています。

1-2-6. 深凹版印刷

インキを立体的に高く盛り上げることで、ザラザラとした触感で紙幣だとわかる印刷技術を深凹版印刷と呼びます。非常に高度な印刷技術です。

1-2-7. 識別マーク

目の不自由の方でも、識別マークを深凹版印刷で刷ることで、指で触れば何の紙幣であるのかをわかるようになっています。識別マークはお札の種類=額面によって形が異なっています。現在は一万円札が「かぎ型」五千円札が「八角形」千円札が「横棒」二千円券が点字の「に」の形状でした。新紙幣では11本の斜線に変更され、額面種類ごとに位置を変えることで、よりわかりやすく改善されています。

1-2-8. すき入れバーパターン

お札を光に透かして見ることで、額面ごとの種類によって縦棒が見えてくる技術をすき入れバーパターンと呼びます。先に述べました「すき入れ」を紙幣に棒状に施しています。一万円札=3本、五千円札=2本、千円札=1本の縦棒をみつけることができます。新紙幣では額面のお札ごとに配置を変え、視認識別を行いやすくしています。すき入れバーパターンに刷られているすかしは複写再現は不可能に近いため、偽造防止技術と採用されています。

1-2-9. 特殊発光インキ

紫外線を紙幣に当ててみると、印章=日本銀行総裁印や表裏の図柄の一部が光る技術のことです。証券やパスポートなどにも用いられており、偽造防止用インキとも呼ばれています。紫外線に発光するのが特徴のため、真偽確認に広く用いられています。現在の紙幣は、表面の印章=日本銀行総裁印がオレンジ色に光り、一部が黄緑色に発光します。

1-2-10. 記番号の桁数

紙幣左上に「記番号」と呼ばれるアルファベットと数字が印刷されています。これは紙幣を識別するために使用されているものです。今まで記番号の桁数は9桁でしたが、新紙幣から記番号は10桁になります。

2. 新紙幣の肖像画に描かれる人物はどうやって決まるの?

日本紙幣には国内歴史上で功績を残した人物が肖像画として描かれることになります。現在時点、紙幣に描かれている人物は、福澤諭吉=1万円、樋口一葉=5千円、野口英世=千円ですね。さて2024年度に発行される紙幣はどうやって、誰に決まっているのでしょうか。

2-1. 紙幣に描かれる人物が決まる基準とは?

日本における紙幣のデザイン・様式は、財務省と日本銀行、国立印刷局が協議のうえ、最終的には財務大臣が決定をします。実は紙幣に描かれる人物を決める制約は特にありません。おおよその基準として、日本国民が世界に誇れる人物であり、教科書に載っているなど一般によく知られている人物であること。偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる人物であること。そういった理由からでしょうか、
現在のお札の肖像人物は、明治以降に活躍した文化人の中から選ばれています。なお、紙幣のデザインに肖像を描く理由として、人の顔や表情には人間の目がいきやすいという特性を利用しているからだそうです。確かに、おかしな点があれば見つけやすいかもしれませんね。

3. 2024年から発行される新一万円札に描かれる人物は?

新一万円札に描かれる人物は「日本経済の父」と呼ばれている渋沢栄一(しぶさわえいいち)氏です。渋沢栄一氏(1840-1931)は明治・大正時代の実業家です。使われている肖像は、70歳の古希のお祝い時に撮影された写真の複数枚を参考として描かれたものだそうです。躍動感や若々しさを表現するために、60歳代前半の年代頃にリメイクし、デザインされました。
渋沢栄一氏は2021年の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公でしたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。家業の畑作、藍玉の製造・販売、養蚕を手伝う一方で、幼い頃から父に学問の手解きを受け、従兄弟の尾高惇忠から本格的に「論語」などを学びました。幕府・一橋慶喜公に仕えることになり、一橋家の家政の改善などに実力を発揮します。徳川昭武に随行し、フランス・パリ、欧州諸国を見聞し、先進諸国の社会の内情に広く通ずることができました。明治維新となり後は明治政府に招かれ、大蔵省の一員として租税や貨幣、鉄道、銀行などの制度作りに貢献した人物です。
一民間経済人となった後も、日本で最初に設立した銀行である第一国立銀行、東京瓦斯(現:東京ガス)、東京証券取引所などさまざまな業種の会社の設立に関わりました。企業の創設・育成に力を入れ、彼が設立に関わった会社の多くが日本経済を支える大企業に成長していることから、「日本資本主義の父」とも呼ばれています。

4. 2024年から発行される新五千円札に描かれる人物は?

新五千円札に描かれる人物は、津田塾大学の設立者でもある津田梅子(つだうめこ)氏です。
津田梅子氏(1864-1929)は明治・大正時代の女性教育家です。使われている肖像は、女子英学塾を創立し、教育者としてのキャリアが確立した年代頃である30歳代の写真を参考として描かれ、デザインされました。父・津田仙の意向により、1871年・明治4年に岩倉使節団とともに海を渡り、アメリカへ留学しました。
横浜から船が出たときにはまだ6歳で、船の上で7歳の誕生日を迎えています。約11年後、帰国してからは教師として女生徒たちに英語を教えます。女性の地位を高めるためにも、自分自身が描く学校を作りたいと再度の留学を決意し、1889年にアメリカに再渡航。1900年には目女子英学塾(現:津田塾大学)を創設しました。生涯を通じて女性の地位向上と女子高等教育に尽力した人物です。

5. 2024年から発行される新千円札に描かれる人物は?

新千円札に描かれる人物は、北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)氏です。使われている肖像は、氏が学者としての地位が確立してきた時期であり、働き盛りで充実した様子であること、あわせて風格や品位が伺える50歳代頃の写真を参考として描かれ、デザインされました。
北里柴三郎氏(1853-1931)は、微生物学者・細菌学者・教育者であり、医の基本は予防にあるという信念から「近代日本医学の父」と呼ばれています。熊本医学校、東京大学医学部を卒業後、内務省衛生局に勤務。ドイツベルリンに留学し、1989年に世界で初めての破傷風菌培養に成功しました。さらに破傷風の血清療法を考案し、この技術はジフテリアの血清治療に応用され、多くの命を救いました。医学博士となり、帰国後は伝染病研究所長を務めます。研究所の文部省移管に反対して辞職。北里研究所を設立し、狂犬病やインフルエンザ、赤痢などの血清開発を続けました。1894年には原因調査として渡った香港でペスト菌を発見しました。慶應義塾大学医学部の創設や日本医師会、病院の設立などにも積極的に従事しました。

6.まとめ

2024年7月を予定に、一新される日本紙幣。偽造防止対策が強化されるなど、注目する点がたくさんあります。紙幣に描かれる人物もついても、テレビやドラマなどで取り上げられることも多くなってくるでしょう。「お金の教養」として、描かれる人物らについて今一度、図書館や書店で調べてみるのもお薦めです。