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『年収の壁』とは?お金づくりに覚えておきたい6つの壁について解説

    

こんにちは、編集者Mです。「年収の壁」という言葉を最近よく耳にしますが、実際には何を指しているのか、その定義が曖昧であることがあります。例えば、「103万円の壁」という言葉を聞いたとしても、「いや、私は106万円の壁だと聞いた」という反応もあり、人々の間で混乱が生じています。このような混乱を解消するために、今回は「年収の壁」とは何かを明確に整理してみましょう。

1.そもそもどういう壁なの? 年収の壁

年収の壁とは、税制や社会保険制度上において、ある特定の年収水準を超えると、その増加した部分に対して異なる税率や社会保険料率が適用される境界線のことを指します。要するに、一定の収入水準を超えると、税金や社会保険料などの支払いが増えるため、収入がその部分で制限されるというイメージです。
この「壁」が存在することで、例えば年収がある一定の金額に達した場合、その金額を超える部分に対しては追加の税金や社会保険料が課されることになります。したがって、収入がこの壁を越えると、手取り収入が増えるというよりも、増えた分の税金や保険料を支払う必要が生じるということです。

2.壁は実は大きくわけて2つある!「税制上の壁」と「年収の壁」

この「壁」には、主に(1)税制上の「年収の壁」と(2)社会保険上の年収の壁の2つがあります。1=税制上の年収の壁は、所得税などの税制が変動する境界線となります。ここで、100万円、103万円、150万円、201万円などのそれぞれ年収水準壁が存在します。一方、2=社会保険上の年収の壁は、健康保険や厚生年金などの社会保険料が変動する境界線であり、例えば106万円、130万円などの水準壁が存在します。このように、年収の壁は個人の収入がある一定の水準を超えると、税金や社会保険料の増加によって収入が制約される現象を指します。したがって、個人の財政計画や収支の管理において、この「壁」を理解し、考慮しておくことが重要です。

2-1.税制上で見る年収の「4壁」

先ほども触れましたが、年収の壁は「税制上の年収の壁」と「社会保険上の年収の壁」という2つの要素に分かれています。具体的には、前者には100万円、103万円、150万円、201万円などの主に4つの年収水準=壁があり、後者には106万円、130万円などの水準=壁2つが存在します。
これらの年収の壁は、税金や社会保険料がかかるかどうかの境界線を示しています。年収がこの壁を超えるかどうかによって、支払い額や手取り収入に大きな差が生まれます。そのため、「壁」という言葉が用いられるわけです。それでは、まずは『税制上の「年収の壁」』に焦点を当ててみましょう。

2-1-1.年収100万円の壁

一般的に、年収が100万円を超えると、住民税が課されます。例えば、東京都在住の30歳の場合、年収が100万円の場合は住民税は0円ですが、年収が101万円になると、住民税が5,000円かかります。つまり、給与が1万円増えても、手取り収入は5,000円ほどしか増えません。

2-1-2.年収103万円の壁

年収が103万円を超えると、一般的に所得税が課されます。これは、基礎控除48万円と給与所得控除の最低額55万円を合わせた額が103万円になるためです。ただし、医療費控除などの各種控除を受けることで、年収が103万円を超えても所得税がかからない場合もあります。

2-1-3.年収150万円の壁

年収が150万円を超えると、配偶者の税金計算で使われる「配偶者特別控除額」が減少し始めます。これは、自身の給与ではなく、家族の給与に影響を与える「壁」です。年収が150万円以下の場合、配偶者の所得税の計算では38万円、住民税の計算では33万円が控除されます。したがって、150万円を超えない場合、配偶者は最大71万円の控除を受けることができます。

2-1-4.年収201万円の壁

150万円を超えると、配偶者の税金計算で使われる「配偶者特別控除額」が減少しますが、その控除額がゼロになるのが201万円です。本人の収入が900万円以下の場合、配偶者の収入(給与所得だけの場合)が103万円から150万円以下で控除額は38万円、150万円超から155万円以下で36万円、155万円超から160万円以下で31万円と段階的に減少し、201万5,999円超過すると、控除額はゼロ円になります。

2-2. 「社会保険上の年収の壁」2壁

では、社会保険上の壁、2つについてみていきましょう。

2-2-1.年収106万円の壁

106万円は、社会保険料のかかるかどうかの境界線です。具体的には、従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて、年収が106万円(厳密には月収8.8万円)を超えると、社会保険に加入する必要があります。企業の規模によって、扶養から外れるため、「106万円の壁」と呼ばれています。この壁を超えると、個人は社会保険に加入し、健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う必要が生じます。

2-2-2.年収130万円の壁

130万円は、家族の扶養に入るか外れるかの境界線です。年収が130万円以上になると、社会保険の被保険者の扶養から抜けて、自ら社会保険に加入しなければなりません。このため、自身の給与から健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う必要があります。企業の規模に関係なく、全ての人が社会保険に加入する必要が生じるため、「130万円の壁」と呼ばれています。

3.年金世代が把握しておくべき「211万の壁」

これまでにお伝えしたのは、「現役世代が気にしたい、6つの年収の壁」についてでしたが、もう一つの重要な年収の壁として「211万円の壁」を解説しておきます。この場合の年収は、年金収入を指します。年金収入だけで生活している65歳以上の夫婦2人の世帯が、「住民税非課税世帯」になるかどうかの境界線として知られています。この壁を超えないためには、2つの条件を満たす必要があります。まず、世帯主の年金収入が211万円以下であること。そして、配偶者の年金収入が155万円以下であることです。これらの条件がクリアされていれば、住民税がかからないというわけです。
ただし、住民税非課税限度額は、居住地の「級地」によって異なります。211万円は大都市圏を中心とする「1級地」の基準です。そのため、「193万円の壁」や「203万円の壁」といった地域も存在します。居住地を変更することで、これまでかからなかった住民税が課される場合もありますし、逆にかからなくなる場合もあります。

4.年収の「壁」対策について、国の考え方は?

現在、国は年収の「壁」対策について非常に重要視しています。年収の壁が存在することは、労働者が働くことを控える原因となり、労働市場の活性化や経済の発展に悪影響を及ぼす可能性があるためです。政府としては、年収の壁を超えることで人件費が増加し、企業の採用活動や生産性向上に影響を与えることを認識しています。そのため、企業が壁を超えた場合に生じる経済的負担を軽減し、働く意欲を促進するための施策を検討しています。
具体的な対策としては、キャリアアップ助成金の導入や税制の見直しなどが挙げられます。これらの施策は、企業が従業員に対して給与や福利厚生を改善するための財政支援を受けられるようにすることで、働く意欲を高め、経済全体の活性化を図ることを目指しています。また、家庭の事情や個々のニーズに合わせた柔軟な働き方の推進や、教育・研修制度の充実なども重要視されています。
これによって、働く人々が自身の能力を最大限に発揮し、仕事と生活の両立を図ることができる環境を整備し、社会全体の発展に貢献することを目指しています。ただし、壁を超えずに働くことがプラスになるのか、壁を意識しないで働くことがプラスになるのかは、それぞれの家庭の事情によって異なります。そのため、慎重なシミュレーションを行い、働き方を検討することが重要です。家庭の状況や将来の計画を考慮して、最適な選択肢を見つけることが求められます。

5.年収の壁を知ることで自分にできること

年収の壁を把握し、自分にできることはいくつもあります。代表的なプランを下に挙げておきます。

1)まず、自身の収入や家計状況をよく把握すること。

具体的には、年収や支出、貯蓄、借入などを詳細にリストアップし、自分の現在の経済状況を正確に把握します。

2)将来のキャリアや収入について計画を立てる。

自分の目標や志向に合った職業やキャリアパスを考え、必要なスキルや資格を身につけるための努力を惜しまないことが大切です。また、転職やキャリアアップの機会を積極的に探し、自身の能力や経験を最大限に活かすことが重要です。

3)収入を増やすための努力。

これには、自己成長やスキルアップを目指すこと、副業や投資などの収入源を増やすこと、キャリアアップを図ることなどが含まれます。また、支出を見直し、無駄な出費を減らすことも大切です。

4)家族や身近な人々とのコミュニケーションを大切にする。

家族やパートナーとの協力や理解を得ることは実は重要です。家族間での意思疎通を図り、経済的な問題や将来の不安について率直に話し合うことで、より良い解決策を見つけることができます。また、お互いのニーズや希望を理解し合うことで、家族全体の幸福度を高めることができます。さらに絆を深める良い機会でもあります。お互いに支え合い、励まし合うことで、困難な状況にも立ち向かう勇気や力を得ることができます。このような絆は、経済的な安定だけでなく、精神的な安定にも大きく貢献します。

6.まとめ

年収の壁を理解することは、自己の経済状況や将来の展望を明確に把握することにつながります。つまり自分のキャリアや収入に関する具体的な目標を設定し、それに向けて計画的に行動することができます。さらに、収支のバランスを把握することで経済的な安定を図り、将来に対する不安を軽減することができます。
具体的な目標を設定し、それに向けて努力することで、自己成長やキャリアの発展につなげることができます。また、自己のスキルや能力を客観的に見極め、スキルアップを図ることで、より良いキャリアの構築や収入増加につながるでしょう。
将来のリスクや不確実性に対する備えをすることも重要です。年収の壁を把握することで、自己の経済状況や将来の展望を把握し、それに基づいた計画を立てることが、より安心して未来を迎えるための一歩となるでしょう。