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NISA投資の光と影、NISA貧乏にならないための掟

    

近年、お金の話題でよく見聞きする言葉として「NISA貧乏」があります。
詳しくは本文で解説しますが、「NISA口座の資産形成に夢中になりすぎて生活に困窮している人」といった意味合いです。
資産形成をしているので確実にお金持ちに向かっているのですが、そちらにお金を回し過ぎて目先の生活が苦しくなってしまうため、見た目にもお金持ちっぽくありません。
若いうちの時間には高い価値があることを考えると、NISA貧乏は機会損失をしているともいえます。
NISA貧乏の定義や実態、そうならないための知識などをまとめました。

NISA制度のおさらい

NISA貧乏を理解するには、NISAの制度を最初におさらいしておいたほうがいいでしょう。
NISAとは国が設けた資産形成に関する税優遇制度です。制度のあらましは、以下のとおりです。

  • 最大で1,800万円分までの投資枠が非課税になる
  • つみたて投資枠と成長投資枠がある
  • 1,800万円のうち成長投資枠の上限は1,200万円
  • 保有期間は無期限(つまり一生課税されない)
  • 年間投資枠の上限は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円
  • つみたて投資枠で買えるのは対象の投資信託
  • 成長投資枠で買えるのは投資信託、株式、ETFなど

NISAはそれまであった制度が、2024年に改正されて大幅拡充となりました。制度改正で生まれた仕組みなので、当時は「新NISA」とも呼ばれていました。
投資家目線で評価すると、この新NISAは神制度です。1,800万円もの規模で投資をしても利益に全く税金がかからないのですから、儲けが丸々自分のものになります。
通常、投資で得た利益には20.315%の税金がかかります。約2割です。これが自分のものになるのですから、投資をやるのであれば使わない手はない制度です。
もちろん筆者も制度開始からNISA口座を利用していて、現在も投資信託の積立をしています。

NISA貧乏とは?

NISA貧乏とは、NISAの魅力を理解した上で、1円でも多くの資金をNISA口座で運用したいあまりに、投資にお金を回しすぎて貧乏な暮らしをしてしまっている人、もしくは状態のことです。
NISAの制度を活用してお金持ちになる、もしくは老後資金の不安を解消するというのは、カチケン的にも理想的な考え方です。しかし、投資にはどこか麻薬性というか中毒性のようなものがあります。口座の残高が増えていくことに快感を覚え、逆に残高が減るととても不安になったりします。
すると、NISA口座の残高が少しでも増えるように節約生活をして、それが過度になってしまうとNISA貧乏と呼ばれる状態になります。

NISA貧乏=本当の貧乏ではない

NISA貧乏に対する言葉の誤解として確認しておきたいのが、NISA貧乏と言われているような人は本当の貧乏ではない、という点です。NISA貧乏と言われているような人は日々の生活は貧乏くさいかもしれませんが、NISA口座には努力の結晶といえる資金があります。しかも、節約しすぎるような生活をして貯めたお金ですから、相応の金額があることでしょう。
よく「NISAで投資をしたのに損をした」という話がありますが、それをNISA貧乏と呼ぶわけではありません。これはNISA口座に入れた資金を使って投資をしたものの、その投資がうまくいかなかっただけのことです。
NISAという名前の投資商品があるわけではなく、NISAはあくまでも投資による利益が非課税になる税優遇制度です。「NISAを始めた」からといって全員がお金を増やせるわけではないことも、押さえておいてください。

NISA貧乏になってしまう理由5選

ここでは、NISA貧乏になってしまう主な理由を5つの項目にまとめました。
もし今、NISAで資産運用をしているものの、どうも生活が豊かになっている気がしないと感じている人は、これらがいくつ当てはまっているかセルフチェックしてみましょう。

NISA投資枠を埋めることにこだわりすぎる

NISAには、投資枠の上限があります。つまり、上限まで埋めることができればNISAを最も効率良く活用したことになります。NISAをフル活用すると節税効果が最も大きくなるため、オトク感も最大化されます。
この快感を求めて、毎年360万円まで使える投資枠を埋めることにこだわりすぎると、NISA口座は育っていくのに目の前の生活は貧しい、ということになります。

「入金力が重要」という言説を真に受けすぎている

NISA投資をしている人は、お金のリテラシーが高い人だと思います。将来のお金に関する問題意識をしっかりと持って今から備えようとしているのですから、計画性も備えている人でもあるでしょう。
そんな人たちは、これまでお金の勉強をしっかりしてきたことと思います。書籍やネット記事、動画などでお金の勉強が気軽にできる時代だけに、十分な知識を持っている人は多いことでしょう。
そんな投資に関するレクチャーの多くに、共通する言説があります。それは、「入金力が重要」というもの。投資で増やす努力をする前に、まずは口座の資金を本格的な規模に育てるために、しっかり入金をしていこう、というわけです。こんなニュアンスのことをレクチャーしている投資本やネット記事を何度も見たという経験はないでしょうか。
入金力を言い換えると、それ以外のことに使うかもしれなかったお金をNISA口座に入れる力、です。余剰資金だけで投資をしているのであれば問題ありませんが、少々無理をして入金力を高めようとすると、NISA貧乏になる可能性が高まってきます。
入金力が重要なのは筆者も否定しませんが、入金力が低いから投資に成功できないわけではないですし、あまりこだわりすぎる必要はないと思います。

NISA投資枠のマウント合戦に参加してしまっている

2026年8月時点で、NISA制度は3年目を迎えます。毎年最大360万円までの投資枠があるのですから、2026年時点で最大値の1,080万円を運用している人がいます。現段階でこれ以上の投資枠はないのですから、「1,080万円勢」はNISA運用者の中のトップに君臨する人たちと見なされます。
SNSではこれを吹聴する人や、そんな人を羨む人がいます。すると、「自分は毎年最大額を投資している」というマウントを取ろうとする人が出てきます。SNSを見ると、NISA口座の画面を公開して「自分は満額投資」と自慢している人がいますが、そんな人のことを意識する必要はありません。
NISAは恒久制度なので、最短の5年で投資枠を埋めなくても全然問題ありません。投資の世界には妙なマウントが飛び交いますが、これこそノイズだと認識しましょう。

生活費まで投資に回してしまっている

お金の勉強をした人であればご存じだと思いますが、お金には使い道によって色分けがあります。おおむね3つに分けるのがセオリーとなっており、「生活資金」「使途が決まっている資金」「余剰資金」の3つです。
両サイドは言葉を見ただけで意味が分かると思いますが、中間の「使途が決まっている資金」というのは、今すぐではないものの使う予定があるお金です。

  • 3年後に子供が大学に入学する時のための教育資金
  • 次の車検時にクルマを買い替えるための資金
  • 5年後に予定している自宅の修繕費用

これらのお金はいずれも、今すぐではないものの使い道が決まっているので、余剰資金ではありません。
今すぐ使わないのだから、という理由でこれらの資金を投資に回すと、その後の展開によってはNISA貧乏に陥る可能性があります。これについては後述しますが、そもそも余剰資金以外を投資に回している時点で生活に何らかの影響は出ているはずなので、NISA貧乏予備軍です。

NISA投資のために生活水準を下げてしまっている

NISA口座への入金力を高めるために節約をするのは良いのですが、それが行き過ぎると生活水準を下げることにまで発展します。筆者は投資という将来のお金のために今の生活を犠牲にするのは良しとしません。
同じお金であっても若い時に使うお金と、老後になって使うお金とでは、意味がまったく異なるからです。
NISA口座は育っていくと思いますが、そのせいで健康を害してしまって将来のために用意したお金を医療費に使うようになことになってしまったら、目も当てられません。

投資に回してはいけないお金で投資をすると起きること

投資は余剰資金でやるもの、というのは基本中の基本です。しかし、NISAから投資を始めた人の中には初心者も多く、ついつい余剰資金以外のお金を使ってしまうケースが後を絶ちません。
「自分のお金なんだからいいじゃないか」との声も聞かれますが、投資に回してはいけないお金を投資してしまうと、何が起きるのか。ここではリスクを解説します。

生活防衛ができず不利な取引を余儀なくされる

最も投資に回してはいけないのが、生活費や生活防衛資金です。これらのお金は今すぐ使う予定があるので、そもそも投資どころか他の使い道はないはずです。
生活費は日々使うものなのでさすがにNISA口座に入れようとは思わないはずですが、生活防衛資金は何もなければ使う予定がないお金なので、要注意です。
もっとも、NISA口座には資産があるので緊急的なお金の入用があっても借金をする必要はありません。NISA口座にある株式や投資信託を売却すれば現金化できます。
しかし、急なお金の入用が発生したタイミングが金融資産の現金化において有利なタイミングとは限りません。たまたま価格が下がっている時に売ることになったら、損失が確定します。
NISAは利益が出た時の税金が非課税になる制度であり、投資による利益を保証しているわけではありません。
生活防衛資金まで投資に回してしまうと、価格変動による損益が運任せになってしまいます。

現金化する時が有利なタイミングとは限らない

生活防衛資金の次に投資に回していけないのが、「使途が決まっているお金」です。前項の生活防衛資金のように今すぐ使う可能性があるわけではないものの、いつ使う可能性があるため、同じ理由で投資には不向きです。
例えば、3年後に必要になる教育資金として用意しているお金だとします。それをNISA口座に入れて投資に回すと、3年後に現金化しなければならない時がきます。その時に果たして現在よりも有利な価格になっているかどうかは、誰にも分かりません。
NISA投資で人気の株価指数インデックス投資では、長期的に右肩上がりにあるから大丈夫といわれていますが、最近の日経平均株価のように乱高下することはまったく珍しくありません。
乱高下している指数への投資をするのであれば、自分の都合でいつでも利益確定ができる資金でなければ、なおさら不利になってしまいます。
筆者はNISA口座で主要な株価指数の投資信託を積み立てていますが、その中でも日経平均株価は乱高下しているため、さすがに上がりすぎだろうということで7万円を超えている時期に2度ほど利益確定をしました。その後の価格推移を見れば、それが一旦は正解だったことが分かります。
このように、NISAを活用したインデックス積立投資であっても、ただ積み立てるだけでなく利益確定をすることがあるわけです。これができるのも、使う予定がない余剰資金だからです。

NISA貧乏にならないための投資哲学

筆者の目線では、NISA貧乏というのは出るべくして出て来た人たちだと思います。これまで投資をしたことがない人にとってNISAはいいきっかけになったでしょうし、お金が増えることに喜びを感じない人はいません。
NISA口座であれば有利な環境で運用できるとあって、投資に夢中になって目の前の生活よりも優先してしまうのは、それほど意外ではないでしょう。
しかし、やはりNISA貧乏は精神衛生上も良くないですし、お金以外の人生の大切なものを犠牲にしているのは確かです。
そこで最後に、NISA貧乏にならないための投資哲学を、投資家目線で伝授したいと思います。

NISA投資枠はノルマではない

NISA投資枠には上限があります。1年あたりの投資額にも上限があるため、NISA投資勢はこの上限を強く意識します。しかし、NISAが誕生する前から投資をしていた投資家にとって、この上限は大した意味を持ちません。
その上限まで非課税になるだけで、非課税ではない投資をずっとやってきた人にとっては、「上限まではオトク」という程度の認識です。
しかし、NISAで投資を始めた人の中には、上限=ノルマのようになってしまい、「上限まで埋めなければ」との感覚に陥る人がいます。
すでに解説しましたが、NISAは恒久制度です。最短だと5年で1,800万円の上限まで埋めることができますが、最短が5年なのであって、最長が5年ではありません。10年かけて埋めても、まったく問題ありません。
証券会社のNISA口座には、「どこまで埋めたか」というニュアンスの画面があるので、どうしてもこれを埋めなければ、という心理になるんでしょうね。
こちらは、筆者のNISA口座画面です。

上限まで全然埋まっていない状況ですが、これで全く問題はないと思っています。あくまでもサブ的な投資であり、老後までに一定の資産形成ができていればOKと位置づけているからです。
証券会社は株や投資信託などを買ってほしいわけで、こうした表示方法にすることによって購入意欲を喚起しているのでしょう。しかしこれは単なる印象操作なので、焦る必要はありません。

人は人、自分は自分

NISA投資勢はどうも、枠を埋めることが偉いような感覚になるようです。いかに早く今年の枠を埋めるか、というマウント合戦が繰り広げられていますが、筆者のようにNISA以外の投資額のほうが大きい勢から見ると、滑稽でしかありません。
NISAは投資という大きな業界の、ほんの一部でしかありません。そこでマウントを取ったところで何の意味もないので、こうした言説に振り回されないようにしてください。

まとめ

今回は、少々気になるキーワードであるNISA貧乏を取り上げました。カチケンは勝ち組を目指すための研究所であって、たとえ将来のためとはいえ今の生活を貧乏にすることを目指してはいません。
NISA貧乏は一種の心理的な問題で、やがて節約疲れに気づいてバランスの取れた投資家になるとは思いますが、あまり深みはまってしまうと投資自体が嫌になってしまう恐れもあります。
NISAを活用して資産形成をするという方向性はきわめて正しいので、うまく付き合って長い目で将来に備えていきましょう。