現金派が知らない間に損をし続けている現実を理解しよう
皆さんは、買い物をするとき、現金とキャッシュレス決済のどちらを選んでいますか?
クレジットカードやスマホのQRコード決済、電子マネーなどを使えば、支払いがスムーズになるだけでなく、利用金額に応じたポイント還元を受けられることも多いので、良いことづくめです。
その一方で、これを現金で支払えば、基本的にこうしたポイントは付与されません。
そこに、新たな格差が生まれているとの指摘もあるので、カチケンとしては看過できません。そこで今回は、支払いは現金オンリーという方々に向けて、ある現実をお見せしようと思います。
この記事の目次
買物をするたびに広がる格差
キャッシュレス決済と現金決済では、同じ商品を同じ店で買い、同じ金額を支払っているにもかかわらず、決済方法によって実質的な負担額に差が生まれます。
実はこの差、単に「ポイントをもらえるかどうか」という問題だけではありません。キャッシュレス決済にかかる費用が商品やサービスの価格に反映されている場合、現金で支払う人も間接的にその費用を負担している可能性があるということが問題の本質です。
キャッシュレス決済は確実に伸びている
経済産業省が発表したデータによると、2025年の日本におけるキャッシュレス決済比率は58.0%となり、金額にして162.7兆円に達しました。
内訳を見ると、クレジットカードがキャッシュレス決済額全体の82.7%を占めていました。
政府は2030年までにキャッシュレス決済比率65%を目指しているので、今後もキャッシュレス化が進むのは必至です。
こうした状況で考えたいのが、現金払いとキャッシュレス決済の経済的な違いです。なぜキャッシュレス決済ではポイントがもらえるのか、考えたことはあるでしょうか。
そして、それでも現金払いを続けることには、どんなデメリットがあるのでしょうか。
ポイント還元はどこから生まれるのか
キャッシュレス決済の魅力は、支払いがスムーズで小銭を用意する必要がないことに加えて、支払い金額に応じてポイントが還元されることでしょう。
例えば、還元率1%の決済手段で月に10万円分を支払えば、1,000円相当のポイントが得られます。年間では1万2,000円相当になる計算です。
日常の買い物や公共料金などをまとめて決済すれば、まとまった還元を受けられるため、ちょっとしたお小遣いになります。
しかし、ここで不思議に思うことがあります。それは、決済事業者はどこからポイント還元の原資を確保しているか?という疑問です。
その答えのひとつが、加盟店から受け取る決済手数料です。
クレジットカードの場合、消費者がカードで支払うと、カード会社や決済ネットワークなどを通じて代金が処理され、加盟店には所定の手数料が発生します。加盟店は、現金払いであれば原則として発生しない種類の決済費用を負担することになるわけです。
もちろん、ポイント還元の原資のすべてが加盟店手数料というわけではありません。カードの年会費、分割払いやリボ払いなどに伴う収益、決済関連サービスの収益、広告宣伝費やキャンペーン予算など、事業者によってさまざまな財源があるのは事実です。
それでも、加盟店手数料がキャッシュレス決済のコストの一部を構成していることは押さえておきたいところです。
消費者が受け取るポイントの裏側には、決済サービスを維持するための費用や、顧客を獲得するためのマーケティング活動が存在しているということです。これは、知っておくべき重大な事実です。
加盟店手数料は商品価格に反映されるのか
ここで問題になるのが、加盟店が負担する決済手数料です。
店舗にとって、決済手数料は事業運営にかかるコストのひとつとなります。仕入れ費用や人件費、家賃、光熱費などと同様に、利益を確保するためには何らかの形で吸収しなければならないことになります。
そこで加盟店が考える対応は、大きく分けて3つです。
1つ目は、店舗が手数料を自ら負担して、利益を減らすこと。
2つ目は、仕入れの見直しや業務効率化などによって、ほかのコストを削減すること。
そして3つ目は、決済にかかる費用も含めて販売価格を設定すること。つまり、価格転嫁です。
実際にどの方法が採用されるかは、店舗の経営状況や競争環境などによって異なるでしょう。決済手数料が発生したからといって、必ずその分だけ商品価格が上がるわけではありません。
ただし、店舗がキャッシュレス決済にかかる費用を販売価格に織り込んでいる場合、現金払いの消費者もその価格で商品を購入することになるわけです。
例えば、ある商品が現金払いでもキャッシュレス決済でも同じ1,000円で販売されているとします。店舗が価格設定の際に決済コストを考慮していたなら、現金で購入する人も、そのコストが反映された価格を支払っている可能性があります。
一方、キャッシュレス決済を利用する人は、同じ1,000円を支払いながら、ポイント還元を受けられるため、その分オトクです。
仮に還元率が1%なら、キャッシュレス利用者は10円相当のポイントを獲得できます。現金利用者には、原則としてその恩恵がありません。これが積もり積もっていくと、大きな格差になるというわけです。
この例では、現金利用者がキャッシュレス利用者のポイントを直接支払っているわけではありません。しかし、価格が共通で、決済コストの一部が商品価格に反映されているとすると、現金利用者も決済サービスに関連する費用を間接的に負担しながら、ポイント還元を受けられないという構図が生じることになります。
現金派が見落としがちな「実質的な負担の差」
現金払いを好む人には、「現金なら使いすぎを防げる」「借金をする心配がない」「決済手数料を負担しなくて済む」といった考え方があると思います。
こうした意見には、確かに合理的な部分があります。
現金を使えば、クレジットカードのように後払いによる支出の膨張を招きにくくなります。また、カード情報の漏えいや不正利用を心配する人にとっても、現金は分かりやすい支払い手段です。
また、通信障害やシステム障害などでキャッシュレス決済が利用できない場合、現金が役立つこともあるでしょう。
しかし、家計の支出を抑えることと、同じ買い物で経済的なメリットを得ることは、そもそも別の問題です。
例えば、毎月10万円を日常の買い物や公共料金などに使う人が、還元率1%の決済手段を利用できるとします。対象となる支出がすべてポイント還元の対象で、年間を通じて還元率が変わらないと仮定すると、年間の利用額120万円に対して1万2,000円相当のポイントが得られます。1万円を超えるとなると、カチケンとしては見過ごせません。
もちろん、実際には還元対象外の支出や上限、キャンペーン条件などがあるため、必ずこの金額を受け取れるとは限りません。それでも、同じ支出をするのであれば、還元を受けられるかどうかで家計の実質的な負担に差が生まれるのは間違いありません。
還元されたポイントを日常の買い物などに使えば、その分だけ現金や預金から支出する金額を減らせます。実質的には、生活費の一部を節約できるわけです。
また、キャッシュレス決済では利用履歴が記録されるため、家計簿アプリなどと連携すれば支出の把握が容易になる場合もあります。
現金を使うたびに記録する手間を減らし、何にいくら使ったのかを振り返りやすくなる点もメリットではないでしょうか。
一方の現金払いでは、こうしたポイント還元や自動的な利用履歴の集計といった機能を利用できないことが多いです。
つまり、現金払いには現金払いの利点があるものの、ポイント還元が一般化したイマドキの環境では、同じ商品を購入する場合でも実質的な負担に差がつく可能性があるということです。
店舗側にもキャッシュレス化の負担がある
ここまでは消費者の視点から考えてきましたが、実は店舗側にも無視できない事情があります。
キャッシュレス決済は、店舗にとって必ずしもコスト削減につながるとは限りません。加盟店手数料に加え、決済端末やシステムの導入・運用費用が発生する場合もあるからです。
特に、利益率が低い小規模店舗では、決済手数料の負担が経営上の課題になることがあります。筆者は以前に小さな飲食店を経営していたことがありますが、クレジットカードやPayPayなどの決済手数料が発生するため、お客さんに価格転嫁せざるを得ない状況でした。
売上高に対する利益率が低い店舗では、数%の決済手数料でも利益を大きく圧迫しかねません。売上規模が小さく、価格転嫁や費用削減の余地も限られていれば、負担はさらに重くなる可能性があります。
もちろん、現金にもコストがかかります。レジ締めや売上金の集計、釣り銭の準備、銀行への入金、現金の保管や盗難対策などには、現金を扱う場合特有の時間や人手が必要になるからです。
このように、キャッシュレス決済の費用だけを取り上げて、現金のほうが必ず安い、あるいはキャッシュレスのほうが必ず安いと結論づけることはできません。
大切なのは、決済手段ごとのコストとメリットを比較すること
キャッシュレス決済がここまで普及してくると、加盟店手数料の競争や透明性を高めることも重要になります。
公正取引委員会は、クレジットカード決済市場における競争環境や手数料の構造などについて調査・検討を進めてきた経緯があります。決済事業者間の競争が進み、加盟店の負担が適正化されれば、店舗側にも消費者側にもメリットが生まれる可能性があるでしょう。
キャッシュレス化を進めるのであれば、消費者に利用を促すだけでなく、決済サービスを支える仕組みそのものを健全にしていくことも欠かせません。
2026年には全東信という決済会社が破産し、大規模な入金の遅延が発生しました。こうしたことが現実に起きると、店舗側もキャッシュレス決済にはリスクが伴うことが顕在化します。
現金払いは本当に損なのか
ここまでの話を整理すると、現金払いが常に損だと断定することはできません。
例えば、現金払いの顧客に独自の割引を提供している店舗や、現金払いのほうが価格面で有利になるケースも考えられます。「現金特価」を明示している場合は、現金で支払ったほうがオトクでしょう。
また、キャッシュレス決済のポイント還元率が低かったり、年会費や利用条件などによってコストが発生したりすれば、必ずしも経済的なメリットが大きいとは限りません。
ポイントを得るために不要な商品を購入したり、クレジットカードの支払いを管理できずに利息や遅延損害金を負担したりすれば、還元額を簡単に上回る損失が生じてしまいます。
つまり、今すぐキャッシュレス決済に切り替えること自体が、家計改善を保証するわけではありません。
それでも、普段から購入している商品やサービスの支払いを、無理なくポイント還元の対象にできるのであれば、現金払いを続ける積極的な経済的理由は薄くなります。
特に、クレジットカードの利用代金を毎月一括で支払い、手数料や利息を発生させずに利用できる人にとっては、ポイント還元は家計の負担を軽減する手段になり得ます。
また、クレジットカードに限らず、利用する店舗やサービスに合ったQRコード決済、電子マネーなどを選ぶことでも、還元や利便性のメリットを得られる可能性はより高まるでしょう。
重要なのは、決済手段を1つの種類に限定することではなく、自分の生活スタイルや支出に合った方法を選ぶことだと思います。
できるところからキャッシュレス決済に切り替えよう
キャッシュレス決済をめぐる問題は、ポイントをもらえる人ともらえない人がいる、という単純な話ではありません。
決済サービスの費用を誰が負担し、その費用によって生まれるメリットを誰が受け取るのかという、経済的な仕組みの問題でもあるのです。
加盟店手数料が販売価格に転嫁されている場合、現金利用者も間接的にその費用を負担していることになります。その一方で、現金払いではポイント還元を受けられず、結果としてキャッシュレス利用者より実質的な負担が大きくなることも考えられます。
もちろん、キャッシュレス決済には使いすぎや不正利用などのリスクがあり、すべての人にとって無条件に最適な選択肢というわけではありませんが。
利用明細を定期的に確認する、支払い能力の範囲内で使う、ポイント還元だけを目的に不要な買い物をしない、といった基本的な管理は必要になるでしょう。筆者はキャッシュレス決済アプリとクレジットカードを敢えて紐づけせず、必要に応じて入金して使うようにしています。これなら、万が一の事態になっても損害は限定されます。
まず出来ることは、日常の買い物や公共料金など、もともと支払う予定の支出からキャッシュレス決済に切り替えていくことでしょう。還元率や利用条件を比較して、自分に合った決済手段を選べば、無理なく家計の負担を減らせるようになります。
利用するキャッシュレス決済方法によってはポイント還元率が高くなったり、他の特典が得られることもあります。このあたりは賢く立ち回るのがカチケン流です。
まとめ
現金には、現金の良さがあります。しかし、同じ商品を同じ価格で購入するなら、ポイント還元を受けられるほうが経済的に有利になりやすいのは事実です。現金払いにこだわることで、本来得られたはずのメリットを逃してしまうのは、もったいないですよね。
現金払いが必ず有利だとはいえないのは、昔より強い傾向です。それでも、日常の支出で還元を受けられるなら、現金を使い続けるよりキャッシュレス決済を選ぶほうが合理的な場面は多いです。
使いすぎを防ぐ仕組みを整えながら、できるところからキャッシュレス決済に切り替えていく。それが、物価上昇が続く時代に家計を守るための、現実的な選択肢の1つになるはずです。

メニュー
閉じる
