不動産投資をお考えの方に知ってほしい現実(前編)
「不動産投資は儲かる」「大家さんになると不労所得が入ってくる」「将来、老後も安心」・・・こんな宣伝文句を見たことはないでしょうか?ネット記事などでも、こうした表現を見ることは多いと思います。
果たして、これは本当なのでしょうか。不動産投資を始めると不労所得として毎月家賃収入が入ってきて、それでローン返済をしてしまえば他人のお金で不動産が手に入ることになります。しかもそうやって物件数を2件、3件と増やしていけば、収入も2倍、3倍となっていくはずです。
果たして、本当にそうなのでしょうか?それが本当なら全員が不動産投資を始めれば世の中から老後の不安はなくなることになりますし、どこか懐疑的な方は多いのではないかと思います。
実際のところはどうなのか?今回は、このテーマに挑んでみたいと思います。もちろんカチケンは特定の不動産会社や証券会社などとは全くの無関係で、完全中立の立場でコンテンツを発信することができる立場にあります。その立場をいかして現役の大家さんや不動産会社の担当者などから得た情報をもとに、不動産投資を始めた人の「現実」をお伝えしたいと思います。不動産投資を始めたいと思っている方はぜひ、これをお読みになってから判断していただきたいと思います。
この記事の目次
1.ぶっちゃけ、不動産投資ってどうなの?
最初に、おそらく多くの方が気になっている点から切り込んでいきましょう。それは「ぶっちゃけ、不動産投資ってどうなの?アリなの?」という疑問です。儲かるという説、やめとけという説が入り乱れていますが、これらを見ていると結局どうなのか釈然としません。リアルな現実を交えつつ、不動産投資の現場で起きていることをいくつかのトピックにしました。
1-1.不動産投資でバラ色の未来?
最初に、ひとつの結論から述べたいと思います。不動産投資を始めるとバラ色の未来が待っているのかというと、決してそんなことはありません。もちろん成功している人はいますし、不動産で大金持ちになった人はたくさんいます。しかし、それが全員ではないことはしっかり認識しておいてください。
不動産投資で「誰もが」成功できるというのは幻想であり、それを追い求めると逆に借金の山だけを残してしまうことになる厳しい世界です。
しかし、ネット記事や不動産会社の広告などを見ていると、成功できる可能性が極めて高いように見えます。収益物件を購入してそこに入居した人から家賃収入が入り、それをローン返済に充てれば何の問題もなくお金と不動産が手に入るように見えるのですが、このビジネスモデルがあまりにもシンプルであるがゆえに「誰にでもできそう」な気がするのです。しかも現在、借家住まいの方であればその逆になるだけなので、簡単に想像できることですよね。
しかし、それは幻想です。これに騙された人から順に失敗して、儲かるどころか借金の山を作ってしまい、ひどい場合は破産しているのです。なぜそうなってしまうのか、次項から詳しく見ていきましょう。
1-2.実は多くの人が失敗している
不動産投資ブームと言われて久しいですが、成功している人はおそらく全体の30%程度ではないかと思います。しかもその成功者の中には「かろうじてプラス」という人が多いと思われるので、完全に思っていた通りの結果を出せた人は一握りでしょう。
その理由として、利回りのマジックがあります。不動産投資はいいですよ、という宣伝文句の中には必ず、利回りの表示があります。例えば利回り10%であれば投資金額の10%が毎年の収入となり、10年後には回収が完了する計算になります。そこから先はずっと丸儲けという皮算用ですが、これは絶対にそうはなりません。なぜなら、表示されている利回りは表面利回りと呼ばれるもので、実際の手残り収入ではないからです。
表面利回りに対して、より現実に即した利回りとして実質利回りがあります。物件の維持費や税金などを差し引いた利回りのことなので、これが手残りになるかというと、そんなことはありません。手持ちの不動産がない人が不動産投資に参入するとローンを組むケースがほとんどなので、ローンの返済があります。ローンの返済を差し引いた手残りのことをキャッシュフローといいますが、ここまでくると表面利回りよりはるかに少なくなっているはずです。
ひどい場合はキャッシュフローがマイナスになってしまい、毎月持ち出しになってしまいます。実はこうなってしまっている人が実に多く、これが払えなくなると破産までまっしぐらです。
1-3.属性の高い人ほど損をしている
ローンを組んで不動産を買って、それが払えなくなるというのは考えただけでも恐ろしいですが、こうなってしまうのは「無理をして不動産を買ってしまった低収入の人」だと思っていませんか?
確かにそんな人が不動産を買ってしまい(買わされてしまい)、破産してしまった例は数えきれませんが、実は「被害者」はもっと意外な層の人たちにもいます。それは、医師や弁護士、企業経営者といった高属性の人たちです。特に医師の失敗例はあまりにも多いので、ひとつの傾向と言っても良いでしょう。
医師は一般的に収入が高いので、お金を持っているイメージがあります。そしてローンを組むにも信用力が高いので、審査に通りやすいのも事実です。一般庶民から見ればうらやましい話ですが、実はここに落とし穴があります。下手にお金を持っているため不動産を買えてしまうことや、ローンに通ってしまうために、不動産会社から言われるがままに「クソ物件」を掴まされてしまうのです。
もっとも、医師は高収入なのでローンで持ち出しになってしまってもそれで破産ということはないでしょう。そのため表に出てきにくいのですが、不動産投資を始めてしまったばかりに赤字を垂れ流している医師はとても多くいます。これが弁護士や企業経営者になると、若干不動産についての知識があったり、損得勘定に長けていることがあるのでまだマシだと言われていますが、それでも高属性であるがゆえに安易な判断でクソ物件を掴んでしまい、慢性的な赤字に悩まされているという事例は山のようにあります。
2.新築ワンルームマンション投資にご用心
2-1.新築ワンルームマンション投資が儲からない理由
不動産投資に関心がある方の中には、新築ワンルームマンション投資に関心を抱いている方は多いのではないでしょうか。不動産投資には他にも中古マンション投資やアパート投資、一戸建て投資などさまざまな形がありますが、その中でもワンルームマンションは買いやすく、区分単位で賃貸経営ができるので人気です。
「新築なら空室になりにくく、満室経営」
「新築なら不具合が起きにくく、低コスト」
「新築なら資産価値が長く維持される」
これらは新築マンション投資のメリットとされていることなので、宣伝文句にもよく登場すると思います。これらはすべて事実ではあるのですが、これだけだと重大かつ不都合な現実が隠されたままになっています。新築ワンルームマンション投資の不都合な現実については、次項で解説します。
2-2.そもそも新築では成功できない不都合な現実
新築ワンルームマンション投資の闇ともいえる重大かつ不都合な現実は、物件の価格にあります。一般的にワンルームマンション投資をするなら単身者が多い場所が良いとされているので、東京や大阪といった大都市圏で社会増が見込める地域です。社会増とは出産によって人口が増えるのではなく、就職や進学などで都会に出てくるといったような人口移動のことを指します。ワンルームマンションの需要はこうした社会増の人たちなので、必然的に大都市圏になります。
言うまでもないことですが、こうした大都市圏は地価が高く、特に東京は日本全国を見渡してもずば抜けて高いまま高止まりしています。そこで新築のワンルームマンションを購入するとなると、安くても3,000万円クラスになります。一般的な価格帯だと5,000万円クラスの物件もありますが、単純にこうしたワンルームマンションを購入して物件価格を回収するのにどれだけの時間がかかるか、考えただけでも気が遠くなります。
毎月の家賃が10万円だとすると年間で120万円、10年で1,200万円、20年で2,400万円に到達するので、その倍にあたる40年以上ということになります。ローンは一般的に35年までなので、ローン完済後の未来です。ここで想像していただきたいのですが、新築のマンションを購入しても40年後は「築40年」です。果たしてそんな築古の物件が新築時と同じだけの家賃を取れるかというと、それは無理です。
それでは家賃を高くすれば良いという話になりますが、家賃を高くし過ぎると入居者の属性が限られてくるため、自ずと集客に苦労することになります。仮に倍の20万円位したところで、回収できるのは20年後です。家賃が20万円もするワンルームマンションなんて想像できませんし、そこに住む人はもっと想像できないですよね。
これが新築では成功できない最大の理由ですが、新築ワンルームマンション投資にはもうひとつ、不都合な現実があります。
2-3..新築プレミアムをご存じですか?
あまり悪口ばかり書くと新築ワンルームマンションのディベロッパーに申し訳ないのですが、新築マンション投資にはもうひとつ重大かつ不都合な現実があります。それは、新築プレミアムです。この言葉をご存じでしょうか、ご存じの方はすでに不動産投資に対してある程度の知識をお持ちだと思います。
新築マンションを売り出すには、土地の取得費とマンションの建設費、さらに宣伝費、販売費などがかかっています。それらにディベロッパーの利益を乗せた金額から部屋ごとの単価が決まります。それに対して、中古マンションはそれを買いたいと思う人が出せる金額なので、需給のバランスによって決まります。このように価格の決まり方が違うため、どうしても新築マンションは市場の実勢価格よりも割高になります。特にディベロッパーが利益をたくさん取ろうとするほど新築プレミアムは大きくなるため、市場価格との乖離は大きくなります。
やたら新築マンション投資を進めてくる不動産会社は、この新築プレミアムでたっぷり儲けをもくろんでいるのかもしれません。そうでないとあんなに必死にセールスをする必要はないでしょうし、そんなに儲かる物件なら自分たちで運用すればいいはずです。新築物件にこれをたっぷりと乗せている不動産会社の本音は、物件を買った大家さんに儲けてもらいたいという共存共栄よりも、高く売りつけて儲けたいと考えている可能性大です。
この新築プレミアムがどれくらいあるのかは、新築で買ったばかりのマンション物件を売りに出してみるとよく分かります。いきなり入居者がつかずローンの返済に困った人が築浅のマンション物件を売りに出したとすると、おおむね新築時の価格より3割程度は安くなってしまいます。つまり、新築プレミアムは物件の価格のうち3割程度はあるということです。筆者が不動産投資家なら、こうして失敗した人が売りに出した物件を買って賃貸経営をしたほうが確実だと思うので、失敗した人には申し訳ないですがそういった物件を探すと思います。これは何も私だけが考えているのではなく、そんな「ハイエナ投資家」はたくさんいます。不動産の世界は、まさに弱肉強食なのです。
3.不動産投資ブームの危ない事件簿
ブームとなって久しい不動産投資の世界では、実に危険な事件が何度も起きています。その中で特大級の不祥事といえる2大事件に触れておきたいと思います。これらはいずれも、実際に起きた事件です。
3-1.かぼちゃの馬車事件
「かぼちゃの馬車」というシェアハウスをご存じでしょうか。スマートデイズという会社が運営しているもので、主に大都市圏の家賃が高い地域にシェアハウスを建てて、そこに入居者をつけるビジネスモデルです。シェアハウスなので賃貸住宅ではなく、1つ屋根の下に複数の入居者が住み、キッチンや風呂などを共有する仕組みになっています。
スマートデイズはこの「かぼちゃの馬車」をオーナー候補者に対して売り込み、そのオーナーが資金を負担する形でシェアハウスを建てます。そのシェアハウスはスマートデイズがサブリースといって家賃保証のような契約をするため、オーナーには入居者の有無にかかわらず定期的な収入が入るビジネスモデルです。一棟アパートでよく見るビジネスモデルで、それをシェアハウスに当てはめたのがスマートデイズの先進性でした。
これだけだと今どきのビジネスモデルに見えます。実際に開始当初は利益が出ているシェアハウスもあったようです。しかし、同じようなシェアハウスをあちこちに建てると、次第に市場は飽和します。そもそもシェアハウスの建築費がかなり高かったので赤字経営になりやすく、入居者探しに苦労する問題は次第に深刻化していきました。
しかし、この事件の本質的な問題はそこではありません。一番の問題だと思うのは、銀行の乱脈融資です。「かぼちゃの馬車」を販売したいスマートデイズと、融資実績を伸ばしたいスルガ銀行が手を組み、信用力の弱い人に対してずさんな融資をし続けました。審査など有ってないようなもので、銀行内ではパワハラ同然のプレッシャーをかけて強引に審査に通していた実態も明らかになりました。
かくして信用力が弱い=お金がない人が儲からないシェアハウスのオーナーになってしまうとどうなるか、もう言うまでもありませんね。こうして返済不能に陥るオーナーが続出、ひどい場合は破産をした人も多数います。「サラリーマンが起業してリッチな大家さんに!」という未来を描いた人の夢は、夢のまま終わってしまったのでした。
3-2.TATERU事件
「かぼちゃの馬車」の次に有名なのが、アパート販売大手のTATERUがやらかした事件です。こちらはシェアハウスではなく、一棟アパート投資です。TATERUは土地の選定からアパートの建築、入居者の募集、家賃の回収といった一連の大家さん業をすべて一括で提供するサービスを売りに、多数の新人大家さんを生み出してきました。今もあるのか不明ですが、TATERUのアプリを使うとアプリ内の操作だけでアパート経営を出来るという謎のサービスもありました。スマホ上で画面をタップするだけで数千万円以上のお金が動くのですから、こんな怖いサービスを誰が使うのだろうと思ったものです。
このTATERUもスマートデイズと似ていて、販売実績を伸ばすために属性の低い人も顧客にしようと躍起になりました。しかしそんな人は銀行融資を受けられないので、審査を受けるための書類を改ざんして通すという犯罪行為に手を染めてしまいました。預金残高が23万円しかなかった人の残高証明を改ざんし、頭に「6」をつけて623万円にしたのです。これで審査クリアとなったのですが、これもスルガ銀行と同様に銀行側と何らかの特別な関係性がなければできないことです。TATERUとズブズブの関係にあったのは西京銀行ですが、おそらくこのケースもグルでしょう。
銀行が預金23万円の人には融資をせず、623万円の人には融資をすることには、明確な理由があります。それはもちろん、返済能力です。23万円の人に貸してはいけないものを不正行為によって貸してしまったため、こうした事例も返済不能や破産の引き金になります。
3-3.不祥事から見えてくる不動産投資の不都合な現実
こうした一連の不祥事には、共通していることがあります。それは、不動産投資ブームにのって「よし、自分もやってみたい」と思った人と、それにつけ込む販売業者、そしてそれに加担する銀行の三者が存在していることです。本来であれば不動産投資をするようなことが無かった人が安易に参入してしまい、大量の返済不能や破産を招いてしまったわけです。
これを不都合といわずして何を不都合といえば良いのか分からないほど悪質な事例ですが、こうした事例は氷山の一角であり、ここまでひどくはないとしても同様の事例は大量にあります。
まさにこうした事例は不動産投資の現実、闇といって良いでしょう。
4.まとめ
不動産投資の現実について詳しく解説して注意喚起をしてきましたが、この記事は前編です。後編では現役不動産投資家のお話や、これらの情報を踏まえたうえで不動産投資をやってみたいと思われている方へのアドバイスを盛り込んでいきますので、ぜひ後編もお読みください。

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