ウクライナ停戦の思惑&景気低迷で安値が続く原油投資ってアリ?その判断と投資法4選
ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した原油高ですが、ここに来てまた低迷が続いています。そこでカチケンが注目したのは、原油相場です。2020年2月には歴史的な暴落があり、そこから緩やかな上昇が続いていました。
それがここに来て、また低迷しています。
「こんなに安いのなら、買っておけば儲かるのでは?」
石油は産業や経済に欠かせない重要な資源であり、需要がなくなることは考えにくいでしょう。ならば、いずれ価格が元通りになって、大儲けができるのでは?というわけです。
果たしてこの仮説は正しいのでしょうか。カチケンでは注目の原油投資についてその仕組みや戦略、そして具体的な始め方まで解説します。
この記事の目次
1.原油相場に大異変が起きている
多くの投資家が原油投資に注目するようになった最大の理由は、先物価格の暴落です。どんな暴落だったのか、なぜ暴落したのか、最初に原油価格に起きている異変について解説します。
1-1.2020年にあった原油先物の大暴落
アメリカの主要な原油先物に、WTIがあります。西テキサス地方で算出される原油の先物商品で、この地域の原油はガソリンを多く含む質の高さで知られ、その取引量の多さと信用度の高さから、WTIの先物価格が世界中の原油価格に大きく影響を及ぼすとされています。
そのWTI原油先物が、4月にクラッシュを起こしました。以下は、WTI原油先物の1年チャートです。

出典:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/clc1.html
それまで長らく60ドル近辺で推移していた価格が、2020年2月頃から下落を始めます。さらに下落は進み、遂に4月に大暴落。なんと史上初のマイナス価格になるというインパクトで、世界中が大騒ぎになりました。
その後値を徐々に戻していますが、それでも60ドル近辺から見ると半値程度です。この相場クラッシュで傷ついた投資家は多く、個人投資家の中にも大損をした人が続出しました。噂によると産油国の政府関係者がインサイダー取引に近いような先物トレードをしたものの、その投資勢力も大損をしたと言われています。インサイダー情報があったにも関わらず大損をしたのですから、いかにこのクラッシュの影響が甚大であったかが分かります。
1-2.WTI原油先物が暴落した理由
それではなぜ、WTI原油先物はこんなにも暴落してしまったのでしょうか。他にも原油先物は世界各国にあるので、WTIだけ暴落したことには新型コロナウイルスによる影響以外の理由も考えられます。
1-2-1.新型コロナウイルスの影響による需要の大幅減少
もちろん最大の理由は、当時世界での最大の関心事だった新型コロナウイルスです。世界中でロックダウンが実施された影響でクルマは走らなくなり、飛行機は飛ばなくなりました。これだけでも大幅の需要の減少ですが、それに加えて経済活動が強制停止状態になったことで原油需要が激減し、その実体だけでなく思惑も広がったことで原油先物の買い手が少なくなり、暴落の要因となりました。
1-2-2.減産の足並みが揃わず
次に大きな要因となっているのが、協調減産の失敗です。産油国同士では一種のカルテルのような仕組みが確立しているため、これまでは既存の産油国同士が生産量を調整することで原油価格の下落を防いでいたのですが、そこにシェールオイル開発で一躍産油国の仲間入りを果たしたアメリカなど、新興の産油国が登場したことによって、こうした既存の産油国だけで牛耳ってきた原油価格が思い通りにならない構図が生まれたのです。
今回の大暴落でも足並みの乱れがマーケットから見透かされ、結局本当に減産の合意ができなかったことが、大暴落の引き金を引きました。
1-2-3.備蓄コストの高騰
株やFXなど、他の投資商品は持っているだけでコストが発生することはありませんが、原油は実物の資源なのでそうはいきません。需要が激減しているため在庫が急激に増え、石油を備蓄しておく設備のキャパシティがいっぱいになってきたのです。キャパシティがいっぱいになるということは、それだけ残っている備蓄施設のコストも跳ね上がります。事実、タンカーなどに備蓄しておくコストが高くなったため、特に5月限の原油先物の受け渡し期限である4月20日に投げ売りが発生し、大暴落となったのです。
1-3.史上初のマイナス価格が与えた衝撃
かつては60ドルはおろか、100ドルを優に超えるような価格で取引されていたこともある原油先物が、まさかのマイナス価格になったことは大きな衝撃となりました。「マイナスになることはない」と誰もが思っていたところにマイナス価格が発生し、しかもマイナス40ドルというかなりの深い価格になってしまったからです。これはつまり、原油先物を買った人はお金を支払うどころかお金をもらいながら原油の現物も受け取れることとなったのです。
原油と言えば限りある資源であり、いつかは枯渇すると言われ続けてきました。つまり、価格が上がることはあっても下がることはないと考えられていたわけです。そこに来てマイナス40ドルという価格が実在したことは、世界中の投資家に原油価格はゼロを通り越してマイナスになることがあるという前例を植え付けました。
これが意味していることは、今後もおなじ条件が整ってしまうと同じことが起こりうるということです。
2.原油相場の仕組み
次に、原油投資を検討されている方のために、原油相場の仕組みを解説しておきましょう。株やFXと同じだという感覚で取引をするとかなり戸惑うことになるので、ここでは原油相場の仕組みについて理解していただきます。
2-1.原油先物と現物の違い
先ほどから大暴落したと述べているのは、原油の先物です。先物とは未来に取引をする権利を売買するものなので、先物を買ったからといってすぐに原油の現物が届くわけではありません。
それに対して、原油には現物の商品もあります。こちらは買い付けたらそのまま現物を手に入れることになるので、今すぐ原油を仕入れたい人が買うためのものです。
それではなぜ先物と現物があるのかというと、価格変動リスクを管理するためです。原油が必要な時に現物を買って仕入れるのは問題ありませんが、それは価格が安定していればの話です。今回は大暴落しましたが、かつては大暴騰したこともあるほど原油価格はボラティリティ(変動率)がとても高いので、原油を必要としている人にとっては、以下に安定した価格で仕入れるかが課題になります。
そんな時に役立つのが、先物です。先物価格も常に変動していますが、今すぐ原油の現物が要らない人であっても将来必要になることが分かっているのであれば、先物価格が納得できる価格になっている時に買っておけば、本当に必要になった時に先物の権利を行使して原油の現物を受け取ることができます。これは、多くの資源や商品などで同様に運用されている仕組みです。
2-2.先物トレーダーは需要家ではない
前項の解説でお気づきになった方もおられるかもしれませんが、原油先物が需要家にとって価格変動リスクを管理するための仕組みなのに、なぜ投げ売りが発生したのでしょうか。むしろ、暴落したのであれば需要家にとってはありがたい話であるはずで、そのまま受け渡し日を迎えて安く原油を仕入れることができれば万々歳のはずです。
しかし、実際には投げ売りが発生しました。その理由は、原油先物を売買している投資家の多くが需要家ではないからです。受け渡し日までの間は先物を自由に売買できるので、その間に先物を売買して価格差で利益を上げようとしているトレーダーが多数いるのです。そんな非需要家にとっては先物が受け渡し日を迎えたとしても、原油を受け取る能力や設備がありません。最初からその気がないのですから。
かくしてそういった非需要家が受け渡し日の直前に先物を投げ売りしたものの、それでも買い手がつきませんでした。そこで困った売り手たちはマイナス価格(つまりお金を支払うから引き取ってほしい)での売りを余儀なくされたわけです。この構図はこれからも同じなので、非需要家の動きが原油先物の価格に大きく影響を及ぼしているとお考えください。
2-3.限月が切り替わると原油価格はリセットされる
ここでもうひとつ、多くの方がお持ちであろう疑問にお答えしたいと思います。それは、「暴落してもひたすら持っておけば、いつかは値上がりするのでは?」という投資家心理です。この考え方はもちろん間違いではありませんが、それは先物に限月という概念が無ければの話です。
原油先物には、限月という概念があります。先ほどから暴落したと述べているのは4月20日が受け渡し日だった5月限ものです。余談ですが、5月限と書いて「5月ぎり」と読みます。限月については「げんげつ」と読むので、こちらも知っておくと読みやすくなると思います。
同じ原油先物であっても、5月限と6月限では全く別の商品であり、そこに連続性はありません。限月が5月の先物を持っている人は、先物と引き換えに現物を受け取って取引終了となるため、もし6月限の先物も欲しいのであれば新たに買い付ける必要があります。この限月があるために、原油先物を持っている人がそれを持ち越すことができず、マイナス価格であっても売らなければならなかったわけです。
事実、マイナス価格を付けた5月限のWTI原油先物は何事もなかったように直前の20ドル台に値を戻しています。

出典:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/clc1.html
しかしこれは5月限ものが終了して次は6月限ものが取引されているので、同じチャートではあるものの別の先物が取引されているということです。
3.安くなっている今、原油投資はアリか
それではお待たせしました、ここまで原油相場に起きていることやその仕組み、理由について解説してきましたが、勝ち組を目指す方々にとって重要な「結局、原油投資はアリなのか」という疑問にお答えします。カチケンの結論としては「アリ」ではありますが、それには一部条件があります。それも含めて解説していきますので、くれぐれも早合点はしないようにしてください。
3-1.大暴落のあとは価格が安定している
先ほどからご覧いただいているWTI原油先物のチャートを見ると、5月限がクラッシュを起こした後は価格が安定し、堅調に30ドル台まで戻しています。その間には6月限ものの受け渡し日がありましたが、それも無事にこなして堅調な動きを見せています。この理由はやはり、新型コロナウイルスの影響が収束に向かっていることで原油の需要も回復するという思惑があるからでしょう。
ロシアによるウクライナ侵攻で再び原油価格が高騰しましたが、今度は低迷が続いています。再び世界が不安定化したり、景気が上向いてくると原油需要が増加し、価格が上昇することは大いに考えられます。
3-2.原油需要は間違いなく回復する
2020年5月時点では30ドル台に回復したWTI原油先物ですが、これは回復の途上であるとカチケンは考えています。なぜなら、それまでずっと60ドル以上で推移していた時期が圧倒的に多く、200MAといった長期的な指標が54ドル近辺を示しているからです。
コロナショックで一時的に世界経済の成長は鈍化してしまいましたが、先進国だけでなく新興国でも経済成長は今後も続くと考えられるので、それに伴って資源需要が高まるのは当然です。そして常に資源の中心にあるのが原油です。筆者の見立てでは少なくとも50ドル台、さらにコロナショックの影響が薄れてくると60ドル以上の価格で推移すると見ています。
3-3.30ドル台で仕込むことができればチャンスあり
「原油投資はアリなのか」という問いに対する結論ですが、カチケンではアリだと考えています。ただし、それは40ドル台以下で仕込むことができればの話です。大きく上昇し始めてから順張りで買ってもリスクが高いだけであまり利益は望めません。しっかりと利益を狙うのであれば、40ドル台、もしくは再度下落があった時に30ドル台で買うことができれば理想的です。
3-4.個人投資家は先物を買うべからず
安い時に仕込んで高くなるのを待つのは投資の王道ですが、もちろん注意点もあります。最も注意喚起をしたいのは、原油先物に直接手を出すのは絶対にやめるべきである点です。そもそも原油先物に個人投資家が直接アクセスすることは難しいのでその心配はないと思いますが、先物には受け渡し日があるため、万が一大きく値下がりしてしまって売るに売れないような状況ができてしまえば、先日起きたマイナス価格のような影響を受ける可能性があります。
原油先物に直接アクセスすることは難しくても、次章でご紹介するようにCFD取引なら個人投資家も売買が可能になります。少額から可能でレバレッジを効かせることもできるので魅力的ではあるのですが、やはり個人投資家が本腰を入れて投資をするとなると、かなりの知識と技術が必要になると考えたほうが良いと思います。
3-5.ETF派はコンタンゴに注意しよう
コンタンゴという言葉をご存じでしょうか。これは先物用語のひとつで、期先物(受け渡し日が先になっている限月もの)のほうが直近物よりも価格が高くなる現象のことです。例えば、2020年3月頃から続いている原油安は、原油の需要が減ったことによる原油余りが原因です。需要が少ないので期日が近い先物を購入することにリスクを感じる投資家が多くなり、直近物ほど価格が安くなります。
それに対して期先物はコロナショックによる影響が少ないことや、その頃には原油需要も回復しているのではないかという思惑もあるため、比較的買われています。つまり、期先物のほうが価格が高くなります。このように直近物から期先になるにつれて高い価格で取引されている現象を、コンタンゴといいます。
CFDなどで先物を取引する方はもちろん、この概念を理解しておく必要があります。それでは他の方法で原油投資をするのであれば意識する必要がないのかというと、そんなことはありません。
その理由は、コンタンゴが続く限りETFなど連動商品の価格はどんどん下がってしまうからです。こうした連動商品は投資家が受け渡し日をまたいでも持ち続けられることが魅力ですが、先物と連動して運用されているため、運営側は常に原油先物を購入し、期日が来る前にそれを売却して次の限月ものを購入します。コンタンゴが続いていると安くなった直近物を売ってそれよりも高い期先物を買うことになるため、常に安くなってから売り、高いものを買うことを繰り返すことになります。先物価格が回復してきているのにETFがなかなか値を戻さないのは、このコンタンゴがあるからです。
4.原油投資の主な方法4選
それではお待たせしました、個人投資家が原油投資に参戦する方法を4通りご紹介します。上から順に原油相場との関連性が高くなるように並べました。
4-1.原油先物CFD
CFDとは差金決済取引のことで、一部の証券会社やFX会社などが提供しているサービスです。CFDが対象としている証券や商品など、実に幅広いものに投資ができるユニークなサービスです。その中に原油先物と連動しているCFDを取り扱っている会社があるので、こうした会社に口座を開設してCFDサービスを利用すると、原油先物への投資が可能になります。
メリットは、例えばWTI原油先物に投資をしたいと思うのであれば、ほぼ本物のWTIと同じ値動きをするため、値上がり益を直接的に得ることができます。デメリットは、先物への投資になるため、受け渡し日が来るとCFDも次の限月ものに切り替わり、同じ金融商品を保有しているように見えても実は知らない間に別物へ投資することになってしまう点です。
実際にチャートを見ても、受け渡し日を超えると価格が飛ぶことがよくあるので、CFDはごく短期のトレード向きです。長期保有すると受け渡し日のたびに暴落するリスクを背負うことになります。
4-2.原油価格連動型ETF
WTIの価格に連動するETFとして有名なのが、アメリカのUSOです。これに直接投資することができる口座があれば、世界で最も残高の大きなETFなので安心感は断トツです。
日本国内にも、原油価格と連動するETFがあります。最も有名なのは「WTI原油先物価格ETF(1671)」と、「原油インデックス連動型上場投信(1699)」でしょう。他にも原油先物価格と連動するETFやETNなどがあるので、こうした商品を買うことで原油投資が可能になります。
ただし、こうした連動型商品は先ほども注意喚起をしたようにコンタンゴへの警戒が必要です。コンタンゴが続いているうちはETF、ETNの価格は先物価格になかなか連動できず、ズルズルと値を下げる可能性もあります。コンタンゴの解消が見込まれるタイミングで安値仕込みができれば、比較的安全に資産を増やせる道が開けます。
4-3.石油メジャー株
石油メジャーとは、石油流通を牛耳っている世界的な企業のことです。エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェル、BPなどが有名です。これらは欧米の企業ばかりですが、産油国資本の石油メジャーなどもありますが、やはり今もこの3社が圧倒的な影響力を持っています。
原油とともに歩んできた企業だけに、これらの企業の株は原油価格と高い連動性を維持しています。つまり、石油メジャーの株を持っておけば原油価格の回復に乗って資産を増やすことができる、というわけです。これらの石油メジャーは海外の株なので、アメリカなど海外株の売買が可能な証券会社に口座を開設することで、手軽に売買できます。
2020年5月現在、石油メジャー株も軒並み低迷中です。原油価格の回復、上昇が起きればこれらの株価も上昇することが十分考えられるので、コンタンゴや期日などを全く気にせず原油投資が可能になるおすすめの方法です。
4-4.資源国通貨
原油などの資源を算出している国は世界にたくさんありますが、それらの中で特に原油輸出規模が大きい主要国は、原油価格の変動による影響を受けます。世界の通貨を売買する投資としてFXが有名ですが、FX口座で資源国通貨を買えば、間接的な原油投資が可能になるというわけです。
多くのFX会社でトレードが可能な通貨の中で該当するのは、カナダドル、メキシコペソ、南アフリカランドなどです。特にカナダとメキシコは原油輸出高が大きいので、原油先物価格がクラッシュした時にはそれぞれの国の通貨も急落しました。この連動性を利用して、いずれもクラッシュから回復できずにいる両国の通貨を購入し、原油価格の回復とともに通貨価値が回復したところで売れば資産増が見込めます。
5.まとめ
原油価格の暴落はマスコミでも大々的に報じられたため、投資家以外の人たちからも「安いうちに買えば儲かる?」と注目を集めることとなりました。実際、証券会社の口座開設数が増えているということで、「コロナ後」を見すえて資産を増やしたいと考えている人が多いことが窺えます。2025年12月時点で原油価格はまだまだ低水準にあるので、今後の回復を確信できる方はぜひ原油投資にチャレンジしてみてください。

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