ロシアがウクライナに軍事侵攻!「これからどうなる?」を現役投資家が解説
2022年2月24日は、もしかすると世界史が塗り替わるのではないと思えるほどの大事件が起きました。ロシアによる隣国ウクライナへの軍事侵攻です。この21世紀、日本では令和の時代に軍事力で他国を屈服させるような戦争が起きることは誰もが想像できないところでした。しかも大国間の戦争はもう起きないとまで言われていましたが、その予想をすべて覆して悪夢が現実になってしまいました。
戦争勃発から1か月以上が経過して、すでに双方に甚大な人的被害が出ており、戦争は泥沼化の様相を呈しています。停戦交渉も行われましたが、実質的には物別れが続いています。この戦争が今後どんな展開になるかは分かりませんが、この戦争が経済や金融市場にどんな影響を与えるのかは容易に想像がつく部分が多々あります。
今回はウクライナへの軍事侵攻によって経済に起きることを、現役の投資家が投資家目線で解説します。戦争を投資のチャンスにするのはあまり感心できませんが、実際にはチャンスもあるでしょう。しかしそれ以上に多大なリスクが顕在化しているので、大損失を被ことがないよう、リスク管理を中心に解説します。
この記事の目次
1.一般的に戦争が起きると相場はリスクオフ
一般論として、戦争や紛争など地政学リスクが高まるような出来事があると相場はリスクオフになります。リスクオフとは何か、リスクオフになると相場はどう動くのかを解説します。
1-1.リスクオフとは
相場には大きく分けて、リスクオンとリスクオフという局面があります。リスクオンはリスクの高い資産に積極的に投資をする傾向が強まっているときで、逆にリスクオフはリスク資産から資金が安全資産に向かう局面です。
リスク資産は株やETF、高金利通貨などです。いずれも収益性が高いので、積極的にリスクをとれる投資環境であれば投資家はこうしたリスク資産を好みます。社会が平和で投資のことを考える余裕があるときでなければ、リスクオンにはなりません。つまり今回のウクライナ戦争のようなことが起きるとリスクオンではいられない投資家が多くなります。
そうなると、相場は一気にリスクオフになります。リスク資産から安全資産である金(ゴールド)や現物資産、安全性の高い通貨などに流れます。安全資産は収益性が低いので普段はあまり好まれませんが、リスクオフになるとそういった資産が一気に値上がりします。
1-2.リスクオフになると起きる動き
それでは具体的に、ウクライナ戦争のような非常事態でリスクオフ相場になるとどんなことが起きるのか、金融資産別に個別に見ていきましょう。
1-2-1.株の暴落
株の暴落は、最も顕著な傾向です。株はリスク資産の代表格なので、ウクライナ戦争に限らず地政学リスクが高まると、間違いなく株から売られます。今回のウクライナ戦争でも、見事に反応しています。
こちらは、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻が起きた直後のNYダウです。

2月24日は寄り付きからギャップダウンといって前日の終値から値が飛ぶように暴落していることが見て取れます。NYダウは世界の株価に多大な影響を当たるので、日本も日経平均株価がこれを受けて暴落したのは多くの方がご存じのとおりです。
1-2-2.金(ゴールド)の上昇
リスクオフ相場では株価と逆相関の関係にある金(ゴールド)の価格が上昇しやすくなります。金は究極の安全資産ですが、持っているだけでは株のように配当が付くこともありません。そのためリスクオンの時には金は見向きもされないのですが、いざリスクオフになると一斉に投資マネーが金に殺到するため、金価格が上昇します。

1つめの丸印が、2月24日の金価格です。その後さらにウクライナ情勢の緊迫化によってリスクオフ相場が加速し、さらに高値をつけています。利益確定の売りに押されて反落する場面もありますが、ウクライナ情勢が予断を許さないこともあって再び買い戻されているのがわかります。
1-2-3.資源価格の上昇
金価格と並んで現物資産として上場しやすいのが、資源です。特に原油価格は大きく上昇しましたが、これはロシアが世界3位の産油国であり天然ガスの産出国でもあるからです。そのロシアに経済制裁が発動されて貿易ができない状態になったため、資源の需給がひっ迫するのではないかとの思惑から、原油や天然ガスなどの価格が高騰しました。
これについては、次章で詳しく解説します。特に原油価格の高騰は「戦争相場」の大きな特徴なので、ぜひその相関性もマスターしておいてください。
1-2-4.ドル高、円高、フラン高
相場の世界には「有事のドル買い」という言葉があります。世界の基軸通貨であり、世界一の大国であるアメリカの通貨であるドルを持っておくことは、不安定化したときに買いが集まるのは不思議ではありません。現に、ウクライナ侵攻で経済制裁を受けたロシア国内ではドルに両替しようとする人が殺到し、ドル不足に陥る事態が起きました。
それでは2つめの円高はどうかというと、今回のウクライナ戦争ではあまり円高の動きが見られず、むしろ円安が進行しました。これはちょっと珍しい現象といえますが、そこには戦争前から起きていた日米の金利差拡大による円安ドル高の流れが加速したとの見方もあります。対ユーロや対ロシアルーブルでも円安が進行しているので、これは戦争の影響というより日本や円に関する原因によって円が売られていると見るのが妥当でしょう。
次に3つめのフラン高というのは、スイスフランのことです。スイスは永世中立国であり、こうした戦争が起きた時であっても中立を貫く国として知られています。その地政学的な位置づけから銀行業が発達しており、スイスには世界中の富豪たちが預金をしているプライベートバンクがたくさんあります。ウクライナ戦争はヨーロッパで起きた戦争ですが、やはりスイスフランはあまり影響を受けることはなく、むしろフランが対ユーロで買われる局面があったので、やはり有事のフラン高は健在だったように思います。
1-2-5.当事者国通貨の暴落
戦争が起きた時にFX投資家が絶対に知っておくべきなのが、当事国通貨の動きです。今回の場合はロシアルーブルとユーロです。ウクライナはEU加盟国ではないのでユーロを使用しているわけではありませんが、ユーロ圏の国々とロシアが激しく対立したこともあって、ユーロは大きく売り込まれる局面がありました。
ロシアルーブルは戦争当事国通貨であるのと同時に、強力な経済制裁を食らった通貨でもあるため、これはもう売られるしかない通貨です。
米ドルや日本円などは戦争から直接の影響を受けることはありませんでしたが、一時的にユーロが売られたことによる影響は見られました。
1-2-6.資源国通貨の上昇
戦争が起きると資源の供給網に影響が出ることが懸念されるため、原油や天然ガス、石炭といったエネルギー価格の上昇が起きやすくなります。コロナショックではエネルギーの需要が極端に低下したため史上初のマイナス価格を付けましたが、戦争勃発後は原油価格が高騰してWTI原油先物も一気に100ドルを超える局面がありました。
天然ガスについてはロシアが世界有数の輸出国であることから供給懸念が沸騰して高騰しましたが、その後は若干落ち着きを取り戻しています。
1-2-7.商品先物の上昇
先ほど金価格の高騰については解説しましたが、それ以外にも商品価格の高騰が起きました。原油や天然ガスについてはもちろんのこと、それ以外に小麦など食糧の先物価格が上昇したのが目を引きます。
小麦価格の上昇については次章で解説しますが、やはり「戦争=食糧を確保しなければ」という心理が働き、それが投資家心理にも影響を及ぼすのでしょう。
1-3.暗号資産はどう動いたか
これまでに幾度となく繰り返されてきた戦争と金融市場への関係性について、今回のウクライナ戦争では新しい事情が加わりました。それが、暗号資産です。これまでのさまざまな戦争が起きた時にまだ暗号資産がありませんでしたが、今回は暗号資産が普及してから起きた戦争です。戦争は暗号資産市場にどんな影響を与えたのでしょうか。
戦争勃発当初は、ビットコインなど主要な暗号資産が上昇する動きが見られました。その後は金融市場全体にリスクオフの波が押し寄せたので、暗号資産の価格も下落。つまり暗号資産は多くの投資家からリスク資産だと見なされていることが透けて見えました。
しかし、その後は特にビットコインの価格上昇が顕著となり、「ロシアの経済制裁の抜け道になっている」との思惑で買われる局面もありました。
しかし特定の国家との関わりがない暗号資産は全体的にそれほど大きな影響を受けてはおらず、それぞれの暗号資産の事情によって価格が推移していたように思います。
2.今回のウクライナ戦争の特殊事情
前章では戦争など地政学リスクが高まると金融市場にどんな影響が及ぶのかというセオリーについての解説でしたが、ここではウクライナ戦争の特殊事情について解説しましょう。今後も地政学リスクが金融市場に影響を及ぶす際には、それぞれの特殊事情があります。それを知っておくことが投資戦略やリスク管理につながります。
2-1.原油、天然ガスの高騰
ウクライナ戦争で原油と天然ガスの価格が高騰したのは、全く不思議なことではありませんでした。戦争によってリスクオフ相場になり、さらにコロナ禍からの経済再開でエネルギー需要が増大することは容易に想像がつくことです。それに加えて戦争当事国であるロシアが石油と天然ガスの輸出国である点が大きいでしょう。
原油については他にも産油国がたくさんあるので代替が利きますが、問題は天然ガスです。ロシアと厳しく対立しているヨーロッパ諸国の多くは天然ガスの輸入をロシアに大きく依存しており、「敵国から資源を買っている」という状況が続いています。特にドイツはノルドストリームというパイプラインをロシアと結んで天然ガスを直接輸入しており、経済的な深い関係があります。
しかし今回の戦争によってドイツは明確に反ロシアを掲げているため、今後ロシアからエネルギーの購入をやめるとも宣言しています。ロシア側も「それなら売らない」と態度を硬化させており、さらには天然ガスの代金支払いをこれまでのユーロではなくロシアルーブルで支払うように要求しています。ヨーロッパ側はそれを拒否しており、今後対立が続けばヨーロッパでエネルギー危機が起きる可能性があります。
こうした事情が天然ガス価格への思惑となり、原油高にもつながっている側面があります。対立しているとはいってもエネルギーがなければ干上がってしまうヨーロッパの弱みが金融市場からも見透かされているわけです。
2-2.小麦価格の高騰
ウクライナ戦争では小麦価格の高騰が起きました。これも今回の戦争の特殊要因のひとつで、それはウクライナが世界第3位の小麦輸出国であることが大きく関わっています。ウクライナのゼレンスキー大統領は「戦争によって今年の小麦収穫と作付けができない」と述べているので、世界第3位の小麦が輸出されない可能性大です。
しかもロシアも世界有数の小麦輸出国で、両国を合わせると世界シェアの3割を占めるそうです。ウクライナは戦争によって輸出ができない、ロシアは経済制裁によって輸出ができない状況とあっては、小麦価格が高騰しても不思議ではありません。これは投資家だけでなく今後パンやパスタなどの価格上昇にもつながっていくことでしょう。
2-3.サイバーセキュリティ関連株の高騰
現代の戦争は軍事兵器だけで戦うのではなく、サイバー空間も戦場になります。ロシアがウクライナに軍事侵攻する直前にはロシアからウクライナに大規模なサイバー攻撃があったことが分かっており、さらには後から中国からのサイバー攻撃もあったことが発覚しました。
これらはウクライナを標的にしたものですが、サイバー攻撃では「流れ弾」が世界中に飛び火することが多いため、世界中の国家や企業が警戒を強めました。そうなると投資家心理としてはサイバーセキュリティ企業の株が注目されるのではないかとの思惑が広がり、実際にサイバーセキュリティ関連株の高騰が起きました。
これも現代の戦争がもたらす影響のひとつといって良いでしょう。
2-4.ビットコイン価格の上昇
ウクライナ戦争が暗号資産に与えた影響には、いくつかの要因や思惑があるといわれています。ビットコインの価格が上昇した理由として指摘されていることを列挙すると、以下のようになります。
- ロシアが経済制裁逃れに暗号資産を利用する可能性
- ウクライナに送金する手段として世界中の支援者が暗号資産を買った
- リスクオフ資産として特にビットコインが注目された
それぞれ全く異なるベクトルなので、これらが複雑に関わり合って暗号資産の価格が動いたものと思われます。経済制裁逃れについては匿名性が売りの暗号資産だけに容易に想像がつきますが、ウクライナにいち早く支援金を届けるために暗号資産が買われたというのは、まさに今どきの要因です。
そして3つめの要因については、特にビットコインに近年見られる現象です。ビットコインは暗号資産の代表格として「デジタルゴールド」の異名を持ちます。リスクオフになった時の資産逃避先として金(ゴールド)が買われるのと同じように、デジタル資産のゴールドがビットコインというわけです。事実、香港で中国当局による民主派弾圧が強まった時には香港から資産の逃避が起き、巨額の資金がビットコインに流れたことが価格を押し上げたといわれています。
3.主要な金融商品別 今後の展開予想とリスク管理
今回のウクライナ戦争を受けて、それぞれの金融市場はどう動くのでしょうか。その展望と、今後同様の戦争や紛争などが起きた時のリスク管理についてそれぞれの金融商品別にまとめました。
3-1.現物株
株はリスク資産の代表格なので、戦争が起きると真っ先に暴落します。戦争でなくてもコロナショックでも真っ先に暴落したため、最も敏感な資産です。そのため株を保有している人が暴落による含み損を避けるには、いち早く売り抜ける戦術が求められます。
逆に保有し続ける人は、暴落した株を安値で拾っていく戦術が有効です。暴落した株を買い拾える人は現金資産に余裕を持たせていた証拠なので、こういう時に資金的な余裕を持たせている人は強いと断言できます。
3-2.投資信託
投資信託も多くの銘柄が株や株価指数などを運用対象にしているため、株式市場の暴落による影響を強く受けます。そのため狼狽売りをしてしまいがちですが、現物株よりも投資信託は資産の分散性に優れていて長期的に保有することを前提にしているものが多いので、あまり狼狽えることなく持ち続けることを推奨します。
ドルコスト平均法によって積み立てを続けている人は、そのまま粛々と積み立てを続けましょう。もし資金的な余裕があるのであれば、暴落で安くなった投資信託を買い増すのも有効です。
3-3.債券
債券は典型的なリスクオフ資産なので、戦争が起きるとアメリカなど主要国の債券が買われやすくなります。今回のウクライナ戦争ではちょうどアメリカが金融緩和をやめてテーパリング、利上げにかじを切ったタイミングだったため、これらの要因が相まって米国国債金利が一気に上昇しました。
これは債券投資にとってはチャンスなので、米国債券連動型のETFなどを買い増していくのが有効です。ただし債券はリスクオンになると不人気になるため価格が下落するため、あくまでも株式投資のリスクヘッジとして活用するのが良いでしょう。債券だけで大きな利益を狙うのは難しいので、いわば「保険」です。
3-4.FX
株と並んで影響を受けやすいのが、FX投資です。外為相場が戦争の影響を受けやすいことに加えてFXでは25倍までの高いレバレッジをかけることができるため、ちょっとした値動きが大きな損益につながります。現物株であれば暴落しても塩漬けにしておける選択肢がありますが、FXでは証拠金が不足するとロスカットとなって強制的に損失が確定してしまうリスクがあります。
これを防ぐのにきわめて重要なのが、資金管理です。レバレッジが高くなり過ぎないように資金的な余裕をもたせておくこと、そして指値で損切注文を入れておく必要があります。FXは市場が24時間ずっと動いているので、自分が見ていない時間帯に突然大きく値が動いてロスカットになってしまうこともあるため、自分が見ていない時間帯に不測の事態が起きても対応できるようにしておきましょう。
リスクオフになると相場が大きく動くので利益も狙いやすくなりますが、一方向に大きく動くだけとは限らないので、あまり欲張って大きな勝負に出過ぎないようにしましょう。
3-5.暗号資産
複雑な要因によって特殊な動きをした感のある暗号資産は、あまり戦争の影響を考慮しすぎないほうが良いでしょう。ビットコインやイーサリアムといった主要な銘柄では資産逃避的な価格上昇が起きましたが、あまりメジャーではないようなコインにまでそれが波及することはありませんでした。
暗号資産にはそれぞれのコインの役割があるので、その役割に関する周辺情報でトレードをするのが無難です。「戦争が起きたから〇〇」といったように断定的な判断でトレードをすると大やけどをする恐れがあります。
3-6.不動産(REITも含む)
ミドルリスク資産の代表格である不動産は、戦争当事国以外ではあまり影響を受けません。たとえば日本で不動産投資をしているとして、ウクライナで戦争が起きたからといって今すぐ入居者が退去してしまったり、建物が大きく損傷するということもないでしょう。不動産については特別な動きをする必要はなく、当初の予定通りの運用をするのがベターです。
不動産の投資信託であるREITについても同様です。戦争当事国や影響を受けやすい国のREITを保有している場合は別として、それ以外の先進国の不動産を運用しているようなREITであれば、特に何か動く必要はないと思います。
4.まとめ
ロシアがウクライナに軍事侵攻するという、21世紀には到底起きないと思われていた悪夢が現実となったことを受けて、その影響や今後の展望について解説しました。残念ながら今後も世界ではさまざまな戦争や紛争が起きることは避けられず、投資家はそれが起きることを前提に行動し、心構えをしておく必要があります。戦争という究極の相場ノイズに対応できるよう、今回の出来事を教訓としましょう。

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