贈与税の非課税枠がなくなるって本当?お年玉やお香典なども課税される?
人生において財産や遺産の相続は大きな事件ですね。これと税金は切っても切り離せません。財産を譲渡されことになったとき、また身内や子・孫に財産を贈与したいと考えたとき。気になるのは贈与税です。贈与税は、年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかからない制度があります。これを『暦年贈与』とし、活用することで相続税を効果的に節税することが出来るとされています。(ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続税に加算されます。詳しくは後述いたします)
さて一方で、この暦年贈与制度を廃止する動きが出ていることをご存知でしょうか。実際に、税制改正がなされるとどうなってしまうのでしょう?年間110万円までの非課税枠がなくなるならば、お年玉やお香典など個人間のお金のやり取りも課税されちゃうのでしょうか?そんな疑問について、併せて贈与税と関わりの深い相続税の仕組みについても学んで参りましょう。
この記事の目次
1.贈与税の基本をおさらいしましょう
1-1.贈与税とは、あらゆる『個人』から『財産』をもらったときにかかるもの
したがって、会社などの法人から財産をもらっても贈与税はかかりません。(※所得税・住民税がかかります)
この『個人』には両親や祖父母、肉親間からの贈与も含まれます。まず贈与で多いのは、親族間で行われるものです。
例えば、親から子への贈与などはよくありますね。親子間の贈与であっても、もちろん贈与税の対象となります。肉親であれば贈与税はかからないと勘違いする方も多くありますが、基本的に肉親は『個人』という扱いになります。また、贈与される金額が多くない場合、申告しなくても大丈夫だと思いがちですが、基本的な考え方として、個人が財産を「無償」で他の者にあげる=譲渡することを『贈与』とし、一定額以上の贈与を受けた人には『贈与税』が課されます。これについて把握しておかないと申告漏れとなり、本来納める税額に加えて、5%~20%の『無申告加算税』が課せられてしまいます。
また、納税が遅れた場合、遅れた日数について2.5%~8.8%の延滞税が加わります。贈与されたことを隠していた場合などは35%または40%の重加算税がかかることもあります。
1-2.ぜんぶに『贈与税』はかかってくるもの?
親から子に・祖父母から子に、もしくはあらゆる家族間において何かをあげる・譲渡するたびすべてに贈与税がかかるものなの?
はい、この『贈与税』の対象にならないものや財産もあります。どんな場合の贈与なら対象にならないのでしょうか。
まず、家族はお互いに扶養する義務がります。であるため、生活費や教育費などには贈与税はかかってきません。また、お祝い金やお香典などをもらっても、それが常識の範囲内であれば課税されないとされています。課税対象にならないものについて具体的に例を挙げるならば、日常の生活費、学校や塾などに支払う教育費、結婚式や出産の費用。また、それらにまつわるお祝い金、お香典などがこれにあたります。
1-3.どんな場合に『贈与税』はかかるのか
贈与税がかかるものを例として挙げてみます。生活費や教育費とは別の一定額額以上の現金や預金、株式などの有価証券、土地・建物などの不動産。併せて『みなし贈与財産』として贈与税の対象となるものに、無利子あるいは低利子での金銭の借り入れや借金の肩代わり、相場より極端に低い価格での財産の譲り受けも対象となります。保険会社から受け取る保険金にも契約者と受取人が違えば、贈与税の対象になることもあります。これらについて個人間(他人同士)はもちろん、親子間の贈与、祖父母から孫への贈与も贈与税の対象となります。
1-4.贈与税の税率は?最高税率は55%なので、実は相続税よりも高い!
一般的に、所得税や相続税より贈与税のほうが税負担は重くなっていることをご存知でしょうか。相続税と贈与税の税率の違いを比較した時、同じ財産であれば圧倒的に贈与税の方が相続税よりも税率が高くなります。
『贈与税』については『相続税法』という法律で定められています。相続税と贈与税には密接な関係があるからです。いわゆる『遺産』は、法律で定められた相続人が引き継ぐこととなります。遺産の総額が一定額を超えると、額に応じた『相続税』が課せられます。この相続税にも非課税枠・基礎控除がありますが、遺産について経済的な価値のあるものすべてが課税対象となるため、場合によって相続税の負担が重くなることがあります。あらかじめそれが予測される場合、相続税対策として、遺産の元の所有者が『生前贈与』で資産を減らしておくことがあります。遺産相続は亡くなったとき1度だけのものであり、遺言書でその相続先を指定したとしても、相続する者が従うとは限りません。対して贈与は、相続と違い自分の財産を自分で譲る先や回数、量についても裁量することができます。そのため、贈与の仕方次第によっては相続税の課税逃れを誘発します。これをの防止・抑制するために『贈与税』の税率については他のさまざまな税金に比較し、高く設定されています。
併せて亡くなる3年以内に贈与された財産についても、相続税の課税対象となります(※法定相続人以外の人への贈与は除きます)。
個人間でお金のやり取りをする場合は『相続』ではなく『贈与』となりますので、税率の高い税金があることを意識しておく必要を覚えておきましょう。
2.贈与税には110万円の非課税枠がある!
2-1.いくらの贈与から『贈与税』が必要なの?年間110万円までは無税!
贈与税の課税方法には『暦年課税』と『相続時精算課税』があり、異なる非課税枠が設定されています。どちらの方式の対象であるかによって、かかる答えも異なります。
『暦年課税』は、1年間(1月1日~12月31日)の受贈額が110万円以下であれば課税の対象とならず、申告も必要ないというものです。この110万円というのは、贈与の合計額に対してとなります。例として、父と母からそれぞれ100万円を贈与された場合を挙げます。
合計額200万円-110万円(控除)=差し引いた額90万円 ←これに贈与税がかかります
父と母の贈与額はそれぞれ110万円以下ですが、これは個別に控除しません。
また、合わせて110万円以下の受贈であっても、一定の額を例年一定の時期に受けとることにするなどした場合には『定期贈与』とみなされる場合があります。その場合、贈与税を課せられることになるので注意してください。
つまり『暦年課税』であれば、個人間の110万までの贈与ならば無税になるということです。
前段で申し上げましたように、生活費や生活にまつわる冠婚葬祭、お香典やお祝い、お見舞いの金銭には贈与税はかからないとされています。 お年玉は「生活にまつわる」に該当するので、贈与税はかからないとされています。しかし、たとえば極端な話として華麗なる一族にまつわる富豪一家などのお年玉の場合なら、常識外れに高額お年玉であるかも?そこで一つの目安が『暦年課税』です。普通の一般家庭においてお年玉をもらう合計額が110万円までなら課税されません。対して110万円を超えるならば、贈与税の課税対象になります。華麗なる一族であるならば注意が必要でしょう。
※『相続時精算課税』は、のちに相続が発生した時に相続税の課税対象とすることを前提にした課税方式です。相続時までの納税を先送りすることとなるため、基本的に節税対策にはなりません。ただし非課税枠が大きいことが特徴で、相続した財産の合計額より2,500万円までは特別控除額として差し引くことができるというものです。税率は一律20%です。例として3,000万円の贈与ならば、課税対象は特別控除額を差し引いた500万円であり、その20%の100万円が贈与税となります。
2-2.この『110万円の非課税枠』がなくなるという噂がある!?
『110万円の非課税枠』がなくなるという噂があるのをご存知でしょうか。現在、お金持ちの家庭においては110万までの贈与をくりかえすことで遺産相続時にかかる『相続税』対策を行っている…ところも多くあるかもしれません。この税金対策を規制する目的で、110万非課税枠の改正が検討されているようです。具体的には、例年での110万以内贈与や亡くなる前までの10年~15年間の贈与を無効になるかもしれない、といった内容とみられています。
相続と贈与に係る税制について、今後一体化が進む見通しです。ただし、この110万の非課税枠になくなるのでは?という噂については未だ不透明であり、決定事項とはいえないのではというのがおおまかな市井の見方として散見されます。あくまで、相続税の課税回避を目的に生前贈与が利用されていること、および、若年層への資産移転を早い段階で促すことを目的とした改正を目指すこととなると想定されています。
3.もし、110万円の非課税枠がなくなると「お年玉」や「香典」も課税される?
先に申しましたように、現行では年間110万円非課税枠までであるならば、お年玉やお香典に課税されることはありません。ただし、華麗なる一族のお年玉的に110万円を超えるお年玉やお香典ならば、通念上常識外とされ、課税の対象とされる可能性もあります。そして、110万円の非課税枠についての制度が「無くなった」としても、生活の範囲内の社交経費として常識の範囲内であるならば課税されることは無いであろうと思われます。また、現段階では110万円の非課税枠がなくなることが決まったわけではありません。噂という煙が立つ理由としては政治や経済、税制への「不安」という火のあるところなのでしょうね。正直、良い方へ改正されることを望むばかりです。
4.私たちの今後の相続・贈与はどう変わるのでしょうか?
今後、相続と贈与に係る税制は、より一体化が進む見通しです。政府与党は「令和3年度税制改正大綱」において「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する」と明記しています。2023年度の税制改正で、以下の項目が変更される見通しとなりました。
- 贈与の持ち戻し期間が3年から7年に延長
- 相続時精算課税制度の見直し
贈与税そのものの制度は大きくかわっていませんが、『相続時精算課税』と『暦年課税』の生前贈与加算については改正がありました。
『相続時精算課税』についてはより利用しやすい制度に変わる見通しです。これまでは、少額の贈与でも申告する必要がありましたが、毎年110万円までの贈与は相続時に申告する必要がなくなります。これにより、資産の早期移転が促進されることが狙いです。
現行制度は、死亡から3年前までの贈与に対しては死後に相続した財産と合算して、相続税が課税されます。今回の改正では段階的に持ち戻し期間が延長され、2031年1月には7年となる見通しです。(※ただし、延長する4年分については、総額100万円まで相続財産には加算しない形で調整するとされました)。
改正をうけて今後は、『相続時精算課税』制度を利用しても相続税対策として110万円までの基礎控除を得られるので、国としては『暦年課税』でなく、こちらを利用することを奨励したい意向です。ただし、『暦年課税』(贈与税の課税対象)と『相続時精算課税』はどちらかを選ぶと戻せないことに注意してください。今までにように継続して生前贈与を活用した相続対策をしたい人は『暦年課税』のままにしておく必要があります。
5.おわりに
贈与税の非課税枠はまだ、いまのところは健在ですし、お年玉やお香典なども課税されることはありません。しかし、政府においては今回の改正案で、これまで問題視されてきた「相続税の課税回避を目的とした生前贈与の利用」や「若年層への資産の移転」問題への対策へ大きくシフトしたと言えるでしょう。資産を移転する時期次第で相続資産が大きく変化しない制度になることで、生前贈与や相続時精算課税制度をどう活用してゆくのか、今後、制度改正からの推移影響をみて、あらためて検討する必要があると言えるでしょう。

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