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続々と大手銀行や地銀、ネット銀行の金利引き上げ。生活への影響は?【前編】

    

こんにちは、編集者Mです。日本銀行(日銀)は2024年3月に、大規模な金融緩和策の一環として2016年に始めた「マイナス金利政策」を解除しました。これにより、2007年以来17年ぶりに金利を引き上げることを決めました。また、7月末には金利をさらに引き上げることも発表しました。これらの変化を受けて、日本は少しずつ「金利が存在する社会」に向かっていると言えます。
これは、預金に利息がつくことで、私たちの生活や経済に新しい影響をもたらす可能性があるということです。7月に日銀が追加利上げを決めたことを受け、ゆうちょ銀行は、9月から普通預金にあたる貯金の金利を引き上げると発表しました。日本銀行が利上げを決めたことを受けて、一般の金融機関でも金利を引き上げる動きが広がっています。最初に影響を受けるのは、普通預金の金利です。つまり、私たちが銀行に預けているお金の利息が増えるということです。
しかし、今の経済状況を考えると、このニュースをただ嬉しく思うだけでは済まないかもしれません。例えば、金利が上がることによって住宅ローンや企業の融資金利も上昇します。そのため、家を買おうと考えている人や、事業を拡大しようとしている企業にとっては、返済の負担が増える可能性があります。今回は、金利引き上げから起こり得る様々な影響について学んで参りましょう。

1.預金金利が引き上げられる背景、理由とは?

預金金利が引き上げられる主な理由は、資金の需要と供給のバランスが変わったからです。具体的には、資金を借りたい人が多いときには需要が高まり、その結果、金利が上がります。一方、借りたい人が少ないときには金利が下がる傾向があります。この需要と供給に影響を与えるのは、景気や物価、為替相場などの様々な要因です。
たとえば、景気が良くなって人々が活発にお金を使ったり、企業が新たな投資をしたりすると、資金の需要が高まります。逆に、景気が悪化すると、需要が減少し、金利も下がることがあります。また、景気が過熱して物価が上がりすぎると、インフレが懸念されるようになります。これを抑えるために、中央銀行である日本銀行(日銀)は政策金利を引き上げることがあります。
政策金利とは、銀行が他の銀行からお金を借りるときの金利のことで、これを上下させることで経済を調整しています。2024年3月には、長い間続いていたマイナス金利が解除され、金利が上昇し始めました。これは、日本経済の状況が変わってきたことを示しています。預金金利の引き上げは、経済の動きや政策によって影響を受ける重要な現象です。

2.今だからこそ聞いておくべき『金利』ってまず、なに?

金利とは、金融機関からお金を借りる際に支払う利息を計算するための割合(%)のことです。たとえば、銀行にお金を預けると利息がつきます。もし100万円を金利0.1%で預けると、税金を考えなければ1,000円の利息を受け取ることができます。
逆に、100万円を借りた場合に金利が10%だとすると、返済する際には元金の100万円に加えて、10%にあたる10万円の利息も支払わなければなりません。では、預金や住宅ローンの金利はどのように決まるのでしょうか。これらの金利の基準となるのが「政策金利」と呼ばれるものです。政策金利は、各国の中央銀行が決定し、日本では日本銀行(日銀)がその役割を担っています。政策金利は、国の景気を調整するために用いられます。

2-1.景気が良い時には金利はどう動く?

景気が良くなれば、政策金利が引き上げられます。金利が上がると、金融機関は以前よりも高い金利で資金を調達する必要があります。そのため、個人や企業にお金を貸すときの金利も引き上げられます。これにより、個人や企業はお金を借りにくくなり、投資や消費といった経済活動が控えられ、景気の過熱が抑制されます。景気が過熱しなくなると、消費が落ち着き、それに伴って物価も下がることが期待されます。

2-2.景気が悪い時には金利はどう動く?

景気が悪くなれば、政策金利を引き下げることがあります。金利が下がると、金融機関はより低い金利で資金を調達できるようになります。これにより、個人や企業にお金を貸すときの金利も低く抑えられます。結果として、個人は住宅を購入しやすくなり、企業は設備投資をしやすくなります。このように、借りやすくなることで経済活動が活発化し、景気が良くなる可能性があります。また、経済が活発になると、物価も上昇していくことがあります。

日本銀行(日銀)は、経済を活性化させるために、金融機関が日銀にお金を預けるときにマイナス金利を設定する「マイナス金利政策」を導入してきました。マイナス金利の状態では、金融機関は日銀に預ける際に利息を支払わなければなりません。このため、金融機関は預けるよりもお金を貸す方が得だと感じるようになり、個人や企業に対して積極的にお金を貸すようになります。この結果、世の中に出回るお金が増え、経済が活性化し、景気回復が促されてきたのです。これまで日銀は、物価が毎年2%程度上昇することを目指してきました。この理由は、物価が2%上がることで、景気も安定し、企業の業績が良くなり、働く人たちの給料も増えると考えられていたからです。しかし、2022年4月以降、消費者物価指数は2%を超える状態が続いています。さらに、2024年の春闘では、大企業を中心に賃金引き上げの回答が相次ぎ、物価が上がる中で給料も上がる動きが出てきています。こうした状況を受けて、日銀は「賃金と物価の良い循環」が見込めると判断し、マイナス金利を解除する決断をしました。
2024年3月にマイナス金利が解除され、日本の政策金利はマイナス0.1%から0.1%に引き上げられました。さらに、2024年7月末には政策金利を0.1%から0.25%に引き上げることが発表され、注目を集めました。今後、金利はさらに上昇する可能性があります。

3.マイナス金利が解除されて金利が上昇すると、私たちの生活にはどのような影響があるのでしょうか。

・普通預金や定期預金の金利が上昇します。

マイナス金利が解除されるまでは、多くの銀行の普通預金金利は年0.001%でした(以下の金利や金額はすべて税引き前のものです)。しかし、マイナス金利が解除された後、この金利は年0.02%に引き上げられました。さらに、2024年7月末には金利がさらに上昇し、年0.1%に達する銀行も出てきています。年0.001%と年0.1%では、利率に100倍の違いがあります。たとえば、100万円を1年間預けた場合に受け取る利息は、年0.001%では10円、年0.1%では1,000円となり、実に100倍の差が生まれます。このように、今後金利が上昇すれば、私たちが得られる利息も増えていくことでしょう。

・個人向け国債の金利が上昇します。

債券とは、国や地方自治体、企業が資金を調達するために発行する借用証書の一種です。中でも、個人向け国債は、国が発行する債券(国債)を個人が購入しやすい形にしたものです。個人向け国債には、金利が常に一定である「固定3年」や「固定5年」、そして金利が半年ごとに見直される「変動10年」という3つのタイプがあります。
これらの国債は、保有している間に利息を得ることができ、また、3年・5年・10年後には元本が戻ってくるという特徴があります。最近の金利上昇を受けて、個人向け国債の金利も上昇しています。2024年8月に発行された「固定3年」の金利は年0.38%、「固定5年」の金利は年0.61%、そして「変動10年」の金利は年0.72%となっています。

・生命保険の保険料が安くなる可能性。

生命保険会社は、契約者から集めた保険料を積み立てて、将来の保険金支払いに備えています。この積立金は「責任準備金」と呼ばれます。責任準備金は、国が定めた標準利率に基づき、各保険会社がそれぞれ「予定利率」を決めて運用しています。予定利率とは、保険会社が契約者に対して約束する運用利回りのことです。この利率に基づいて、保険会社は保険料を計算します。つまり、保険料には見込まれる収益分が反映されているのです。
もし予定利率が引き上げられると、保険会社はより高い利回りで資金を運用できるようになります。その結果、収益が増加し、契約者に対して必要な保険料を引き下げることが可能になるのです。このように、金利上昇は生命保険の保険料にプラスの影響を与えることが期待されます。つまり、金利が上がることで、契約者にとってはよりお得な保険料が設定される可能性が高まり、生命保険を検討する際には良いニュースと言えるでしょう。

・住宅ローンの金利が上がる。

金利が上がると、住宅ローンの金利も上がります。住宅ローンには借入れ中ずっと金利が変わらない固定金利と、金利が見直されて変動する変動金利があります。このうち変動金利の住宅ローンの金利は、金融機関が企業向けに貸し出す際の基準金利「短期プライムレート」を参考に決められます。そして、政策金利は短期プライムレートに影響を及ぼします。ですから、マイナス金利が解除され、政策金利が上昇すると変動金利の住宅ローンの金利が上がる可能性があります。なお、固定金利の住宅ローンは長期金利(10年もの国債の利回り)を基準にしています。こちらも、2022年12月に日銀が長期金利の上限を引上げたことを受け、上昇傾向にあります。

・為替レートが円高になる可能性。

マイナス金利政策が解除され、日本も金利のある社会に向かっているものの、海外の金利は日本よりも一般的に高い状況が続いています。たとえば、2024年7月時点での米国の政策金利は5.25%〜5.5%と非常に高くなっています。日本の金利が上昇してきたとはいえ、依然として海外と比べると低い水準にあります。このため、利息が少ない日本に対して、利息が多く得られる米国にお金を預けたいと考える人が増え、結果として米ドルを買う動きが活発化します。これが進むと、日本円が売られ、ドル高(円安)の状況が生まれます。
しかし、日本の金利が上昇したり、逆に米国の金利が下がったりすると、両国の金利差が縮小します。こうなると、為替レートは円高に動く可能性が高まります。実際に、2024年7月末に利上げが発表された際には、為替レートが円高に振れました。
さらに、2024年8月2日には日経平均株価が2216円もの大幅な下落を記録しました。この原因は複雑で一概には説明できませんが、米国の景気減速に対する懸念や、為替レートの変動が影響していると考えられています。
一般的に、金利の上昇は企業の設備投資にかかるコストを増加させるため、株価が下がる要因となることも覚えておくべきです。為替レートや金利の動きは、私たちの生活や投資環境にさまざまな影響を与えるため、注意深く観察することが大切です。