環境ビジネスの新しい選択肢として話題沸騰の系統用蓄電池投資とは
環境ビジネスといえば太陽光発電や風力発電などの投資案件を想像する方が多いと思います。もちろんこれらも環境ビジネスとしてすでに確立しており、多くの案件が実際に稼働しています。
そんな環境ビジネスの世界で、新たに注目されている投資があります。
それは、系統用蓄電池です。詳しくは本文中で解説しますが、蓄電池の中でも系統、つまり送電網に接続されている蓄電池のことです。なぜ系統に接続されている蓄電池が投資案件として注目されているのかを、現役の投資家であるカチケン編集部Tが投資家目線で解説したいと思います。
この記事の目次
最初に、系統用蓄電池投資とは
蓄電池とは、充電と放電を繰り返して使用することができる電池のことです。蓄電池自体は特に目新しいものではなく、私たちの身の回りには実に多くの蓄電池があります。
- スマートフォン
- モバイルバッテリー
- コードレス掃除機
- ワイヤレスイヤホン
- 加熱式たばこ
これら以外にも、充電して使うものには必ず蓄電池が内蔵されています。
すでに家庭用の蓄電池は、特に太陽光発電を導入している住宅などで普及が進んでいます。太陽光発電は晴れている昼間しか発電をしないため、それ以外の時間帯に電力を使うために導入するケースが多く、うまくシステムを構築すると外部からの電力を使わずに電力の需給を家庭内で完結することも可能です。
系統用蓄電池も原理は同じで、規模の大きな蓄電池が系統に接続されていると理解すると分かりやすいと思います。
なぜ、「系統用」なのか
それではなぜ、系統用蓄電池は電力系統に接続されているのでしょうか。それによって何ができるのでしょうか。
系統用蓄電池には、主に3つの役割があるとされています。その3つとは、以下の通りです。
- 電力の需給調整
- 再生可能エネルギーの出力変動を吸収
- 電力系統の安定化
これだけだと、ちょっと分かりにくいかもしれません。特に再生可能エネルギーとの関わりは重要なので、補足しておきましょう。
再生可能エネルギーは、自然由来の電源です。太陽光や風力などが代表格ですが、これらのエネルギーはいずれも自然が相手だけに、気まぐれな部分があります。太陽光は晴れた日の昼間しか発電ができませんし、風力は風がなければ発電できません。その一方で十分な太陽光や風があって、余るほど発電することもあります。
こうした気まぐれさは、電源として不安定です。火力や原子力であれば需要に応じて発電量を調節できますが、気まぐれな自然が相手だとそうもいきません。しかし、再生可能エネルギーへの依存度はジワジワと上昇しています。
このこと自体は世界全体で起きているエネルギーシフトであり、脱炭素社会の実現に向けて有意義なことなんですが、自然由来の不安定さを何とかしなければなりません。
そこで近年普及が進んでいるのが、蓄電池です。余るほど発電する時には充電しておいて、自然からの電力供給が少ない(もしくは無い)時には蓄電池からの電力でまかなうというわけです。すでに家庭用の蓄電池は一定の普及が進んでいて、家庭内で電力の完全自給を実現している住宅もあります。
それを大規模にして系統に接続したら、大規模な再生可能エネルギーによる発電の不安定さを吸収して、電力の安定供給に貢献できるはず。こうして生まれたのが、系統用蓄電池です。
先ほどの3つの役割を改めて見てみましょう。
- 電力の需給調整
- 再生可能エネルギーの出力変動を吸収
- 電力系統の安定化
なるほど、そういうことかと腹落ちしやすいのではないでしょうか。
環境ビジネスはこれまで、太陽光など自然由来のエネルギーを使って発電をして利益を目指すビジネスモデルが主流でしたが、今後は貯めることにもビジネスチャンスが開かれ始めているということです。
それだけ再生可能エネルギーの比率が高まっている証拠で、こうしたエネルギーを社会が使いやすくするための成熟が進んでいると考えることもできます。
環境ビジネスとして見た4つのメリット
それでは次に、系統用蓄電池が投資案件として注目されている理由についての話に進んでいきましょう。これだけのメリットがあれば投資家が目を向けるのは不思議なことではないと理解していただけると思います。
再生可能エネルギー拡大の必須インフラである
先ほど解説したように、再生可能エネルギーはとても気まぐれです。社会がこの気まぐれに付き合うわけにはいかず、再生可能エネルギーの普及が進むにつれてこの気まぐれさを何とかしなければならないという機運が高まっていました。
その最適解が、系統用蓄電池というわけです。天候や自然の各種条件に左右されやすい再生可能エネルギーに「ワンクッション」を入れることで供給の安定化を図り、気まぐれさが社会に影響を及ぼすのを防止します。
特に近年ではデータセンターなど24時間電力を止めることができない施設が急増しているため、電力を安定供給することは国際的な競争力にも直結します。
系統用蓄電池の普及が進むことにより、再生可能エネルギーはもっと普及しやすくなっていくでしょう。この系統用蓄電池に投資するということは、次世代のインフラに投資することを意味します。とても有意義なことであるのと同時に「手堅い投資」であることが魅力です。
発電しないのに収益を生む新しいビジネスモデル
これも先ほど解説したように、これまでの環境ビジネスは発電することが主流でした。しかし、系統用蓄電池は自ら発電をしなくてもビジネスが成り立つところポイントです。発電を収益化するには、売電が一般的です。
その一方で系統用蓄電池の利益モデルは多様で、時間帯による電力価格差のアービトラージ、需給調整市場、容量市場など、利益を狙える機会が1つではないところが大きな特徴です。
もちろん、系統用蓄電池が稼働することによって二酸化炭素が発生することはありません。大規模なものになると一部騒音は発生しますが、大規模な発電施設のようなリスクはありません。
電力を「作る」のではなく、「貯める」「動かす」ことによって利益を生むビジネスモデルはこれまでありませんでした。その先進性も、投資家にとっては魅力的です。
FITに依存しない環境投資
太陽光発電には、FIT(固定価格買取制度)というブーストがありました。ありました、と過去形で表現したのは、すでにこのFITが成熟期を迎えているからです。制度自体はまだ存続していますが、FITによる買取価格は年々低下しています。
元々は高額になりがちだった太陽光発電システムの導入費用を補助したり、売電価格に下駄を履かせることで投資意欲を喚起するために国が制度を設けてきました。
しかし、FITには20年という期限がありますし(産業用の場合)、FITの期間を満了したあとのことを考えるフェイズに入っています。FITが終了したあとは「卒FIT」といって自家消費モデルに転換したりといった動きが起きていますが、系統用蓄電池にはこうした制約がありません。
しかも制度設計が立ち上がったばかりの時期であり、今後の拡大余地が大きく、この「余地」に注目する投資家は多くいます。
不動産投資や太陽光発電投資との親和性が高い
系統用蓄電池投資に参入している投資家の中には、すでに不動産投資や太陽光発電投資に参入している投資家が多く含まれています。最大の理由は、不動産や太陽光発電などの投資との親和性が高く、これらの投資で培ったノウハウを応用しやすいからです。
遊休地や工業地域の土地を活用する方法として太陽光発電が注目されてきた経緯がありますが、系統用蓄電池についても同様の活用が期待できます。また、変電所近接地といって変電所が近い土地を活用する手段としても期待値は高いと思います。
他の土地活用法と比べると土地の条件が厳しい部分はあるのですが、系統用蓄電池投資においても用地取得やインフラ開発、SPC(特定目的会社)の運営といった不動産や太陽光などの投資で培ったノウハウを活かしやすいでしょう。
環境投資、インフラ投資、そして金融システムという次世代の投資の融合体ともいえます。
ESG、脱炭素評価との親和性が高い
近年ではESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治)といってこれらの3要素を重視した経営のあり方に注目が集まっています。CSR(企業の社会的責任)と似た概念で、社会や環境に貢献できない企業は生き残れないという文脈にも言い換えられます。
これからもますます加速すると見られるESGの潮流において、系統用蓄電池投資は脱炭素社会実現に貢献するビジネスであるとして評価されるため、企業価値の向上にも資すると言われています。
上記のメリットと比べると無形の価値ですが、特に大企業にとってはこうした無形の価値がとても大きな意味を持つため、今後は大企業からの投資が増加するでしょう。すでに系統用蓄電池の接続検討申し込み事業者には、大手企業の名前も散見されます。
環境ビジネスとして見た4つのデメリット、リスク
メリットの次には、系統用蓄電池のデメリットやリスクを投資家目線で解説します。ここでは4つを挙げていますが、まだ制度や市場が未熟であるがゆえのデメリットもあるため、一部のデメリットは今後解消していくと思われます。
収益モデルが複雑で分かりにくい
系統用蓄電池は収益モデルが多様であることがメリットではあるのですが、その一方で「分かりにくい」との声も聞かれます。安い時間帯の電力を貯めておいて高い時間帯に売却するアービトラージは比較的分かりやすいと思いますが、それ以外について将来の供給力を商品としているだけに分かりにくい部分があるのは事実です。
太陽光発電は発電量に売電単価を掛けたものが売り上げになるため分かりやすく、そこから初期費用や維持コストを差し引いたものが手残りの利益となる点も、従来型のビジネスを踏襲しているため分かりやすいと思います。
環境ビジネスではあるものの、電力市場や金融といった環境分野以外の知識が求められるため、ハードルが高いと感じる投資家は多いかもしれません。
制度変更リスクがある
系統用蓄電池の収益に直接関わっている電力の需給調整市場や容量市場、長期脱炭素電源オークションといった仕組みは、まだまだ始まったばかりで発展途上です。系統用蓄電池投資を検討している人でなければ、これらの制度や市場の名前すら知らないということが大半ではないでしょうか。
国が音頭を取って始まった制度であるため、ある日突然なくなってしまったりといったことはないと思いますが、制度を運用してみて浮き彫りになった問題点を解消するための制度の変更は大いに考えられます。
投資家によっては制度変更がリスクになる可能性もあることは、かつて太陽光発電におけるFITが何度も制度設計を変更してきたことを見ても容易に想像がつきます。
制度の変更などによるリスクを避けて様子を見るか、先行者利益を優先するか。このあたりは投資家の判断に委ねられる部分です。
初期投資額が高額になる
系統用蓄電池は、大規模な蓄電設備と、それを設置するための土地が必要です。少なく見積もっても数億円規模の投資になりますが、実際の投資案件を見ると数十億円規模になるのが一般的です。
当然ながら個人投資家が気軽に参入できる規模感ではなく、どちらかというと専門の事業会社や投資ファンド向けの案件と捉えられています。
それでは個人投資家には投資機会が無いのかというと、そんなことはありません。投資ファンドなどが系統用蓄電池投資に参入し、それを小口化、証券化した商品があります。1口1万円から購入できる商品もあるので、これらの商品を軸に検討するのが良いと思います。
技術的な進化によるビジネスモデルへの影響
系統用蓄電池を含む環境ビジネスは成長産業として見なされており、世界的な競争が激しい分野でもあります。そのため蓄電池の技術的進歩も目覚ましく、今後技術的な進歩によってビジネスモデルが影響を受ける可能性があります。
例えば、蓄電池価格の低下。今後蓄電池の価格が低下して参入障壁が低くなると投資家が増え、ビジネスの先進性や先行者利益が脅かされるかもしれません。新規参入が相次ぐことによって競争が激化し、参入当初ほどの優位性は維持できない可能性もあります。
また、全個体電池など現在のリチウムイオン電池とは異なる新しい蓄電技術が登場することにより、先に参入しているリチウムイオン電池による蓄電池事業が「過去のもの」になってしまう恐れもあります。
それほど高い可能性ではないとしても、リスクとして留意しておくべきことです。
まとめ
系統用蓄電池投資は、再生可能エネルギーの安定的な供給を裏方として支え、脱炭素社会を実現するための先行投資と定義できます。環境ビジネスに投資する会社や投資家にとっては「太陽光の次の一手」と位置づけられており、系統への接続を希望する申請が殺到している状況です。
短期的な利益や初期投資の回収を望む投資家にとっては不向きかもしれませんが、長期的な視野で「環境資産」を構築し、社会や環境への貢献をしながら利益を得て行くスタンスの投資としては十分メリットがあるといえます。

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