「50代で貯金なしが41%」の衝撃データから見えたヤバい現実と対策 前編
金融庁の諮問機関である金融広報中央員会が定期的に調査、発表している「家計の金融行動に関する世論調査」というデータがあります。これは日本人の資産状況やマネーリテラシーを知るのに役立つ資料なので、筆者も毎回発表されるたびにチェックしています。
2021年調査分が最新のデータなのですが、この内容があまりに衝撃的なものでした。何が衝撃的だったのか、どこが問題なのかについて投資家の視点で解説したいと思います。
この記事の目次
1.金融庁の最新データがヤバすぎた
金融庁に関連する専門機関が調査した結果だけに信憑性は高く、筆者も内容を見てみて「さもありなん」という印象でした。しかしこのままでは将来があまりにも不安なので、それを注意喚起する意味でも最新データに対するツッコミを入れたいと思います。
1-1.50代で「貯金なし」が41%!
まず、最も衝撃的だったのが、50代の人で「貯金なし」の人が41%もいることです。41%というとほぼ半分の人が50代で貯金ゼロの状態にあるということです。現在50代の方、50代になる日が近づいている方は、ご自身の資産状況を一度精査してみてください。
預貯金だけで保有している方であれば預金残高がそのまま資産額とイコールなので分かりやすいと思いますが、それ以外の形で資産を保有している方は総額を簡単に計算できないと思いますが、現金以外の金融商品で資産を保有している方はマネーリテラシーが高いと想像できますので、「総額をすぐに算出できない」ことはひとつのステータスになるかもしれません。
1-2.50代の貯蓄額中央値が30万円!
もうひとつ、50代の資産状況で驚きだったのが「中央値が30万円」という事実です。平均値だと極端に資産が多い人も計算に含まれるためどうしても平均値が現実と乖離してしまうのですが、中央値は人数のちょうど中間にあたる人から得られるデータなので、かなり現実に近い数値であると思われます。
それを踏まえたうえで、50代の人たちの貯蓄額中央値が30万円というのは、かなり衝撃的です。50代には50歳の人と59歳の人が含まれるわけですが、59歳の人は間もなく老後が始まるというのに、貯蓄が30万円という人が実在しているわけです。
1-3.生活のために借金をしている人が増加!
さらにもうひとつ、気になるデータがあります。それは、借入金です。借入金、つまり借金がある世帯は全世帯のうち16.4%です。だいたい6世帯に1世帯くらいが借金を抱えている、つまり資産どころかマイナスの資産を抱えていることが分かります。
住宅ローンも含まれていると思いますが、借金があるということは、まずその借金を完済しないことにはプラスの資産形成ができないわけで、これも決して看過できないデータです。
1-4.大半の人がお金の対策を考えていない!
この衝撃的な状況を、当の本人はどう考えているのでしょうか。同調査結果にある「あなたはご自分の金融資産などをより安全なものにするため、何かなさいましたか」との問いに対して、最も多かった回答は「何もしていない」でした。しかもその比率はダントツの70.2%(!!!)です。
ちなみに2位は「情報を収集した」で10.9%です。情報を収集してそのあとどうしたのかは分かりませんが、少なくともこの10%の人たちには何もしてない7割の人たちとは違う未来がありそうです。
2.最新データから見えてきた危機
さて、これらの衝撃的なデータを見てどう感じられたでしょうか。若い世代の人たちが資産形成や金融資産の知識をあまり重視しないのは、仕方ないかもしれません。しかし、40代以降の人となると話は別です。特に前章では50代の資産状況について警鐘を鳴らしましたが、この状態をどう評価するべきなのでしょうか。
2-1.全体的な資産額が少なすぎる
まずいえることは、全体的な資産額が少なすぎる問題です。平均値だけを見ると2,000万円近い資産額が出てくるのですが、これは極端に資産額が大きい人が含まれているので現実を表しているとはいえません。50代の貯蓄額中央値が30万円、これが実は現実を表していると思います。
これが少なすぎることは、言うまでもないと思います。もし今の収入が突然途絶えてしまったら、30万円程度では1か月くらいで破綻してしまうでしょう。病気やケガなどの突発的な事情であればそれに関するお金もかかるので、なおさらです。
2-2.二極化がどんどん進んでいる
貯金ゼロや限りなくゼロに近い人が多くなっている一方で、富裕層も増え続けています。野村総合研究所が発表している富裕層に関するデータでは「超富裕層(資産5億円以上)」「富裕層(資産1億円以上)」「準富裕層(資産5,000万円以上)」の3つのカテゴリーがいずれも増加しています。
その一方で「アッパーマス層(資産3,000万円以上)」が少し減っているので、中間層が減っている一方で富裕層が増え、それと同時に貯金ゼロや限りなくゼロに近い人たちも増えていることがわかります。
この二極化は、今後さらに進むでしょう。日本は総中流の国といわれてきましたが、それは昔話です。
2-3.老後に対する不安が行動につながっていない
先ほど紹介した金融広報中央委員会の調査結果から見えてくるのは、老後や将来に対する危機意識の低さです。今はどうにかやっていけているので、先のことはその時になって考えようと思っているのか、老後に対する不安を感じている人は多いものの、それが具体的な行動につながっていません。
このままの状態を放置すると間違いなく破綻します。それについては、後述します。
2-4.投資に対するリテラシーの低さが際立っている
資産形成に対して「何もしていない」「何もしようと思わない」という回答がいずれもトップになっている現状は、危険と言わざるを得ません。しかしその一方で年金など老後に不安を感じている人はとても多く、それならなぜ今できることをしないのか不思議に思います。
上記のデータを詳しく見ていくと、「老後に対しておぼろげな不安はあるが何か始めたらいいのか分からないので先送り」にしてきた結果が今なのではないかと思います。
2-5.このままの状態を放置するとどうなるか?
この危険きわまりない状態を放置していると、どうなるのでしょうか?ミクロ的な目線とマクロ的な目線の両方で考察してみます。
2-5-1.老後破産
老後破産という言葉を見聞きすることが多くなりました。自己破産をするかどうかは別として、老後資金がなく破産状態になることを老後破産といいます。公的年金の受給資格がない人は論外として、公的年金があってもそれだけでは生活ができずなけなしの貯金を取り崩してやりくりするも、それも底をついてしまった状態を想像すると、絶対にそうはないたくないと思いませんか?
日本には生活保護があるので飢え死にすることはありませんが、高齢者の生活保護が増えていることの背景に老後破産があることは間違いないでしょう。
2-5-2.日本が貧しくなる
貧しい人が増えると、日本全体も貧しい国になります。安いものしか売れなくなってデフレが進行し、土地や企業の株も安くなって外資に買い叩かれて日本人は外資にお金を貢ぐだけの存在になっていくかもしれません。
すでに中国人投資家が日本のマンションやアパートを買い漁っている現状を考えると、日本人がなけなしのお金から家賃を中国人大家に支払うという構図はすでに各地で見られます。
こんな未来は嫌だと感じる人がほぼ全員でしょう。それなら日本人は今こそ、金融リテラシーを高める必要があります。日本人の金融資産は1,000兆円を超えており、それを仮に年利5%で運用するだけでも年間50兆円の不労所得が日本全体に転がり込んできます。日本の国家財政に占める赤字国債は40兆円から50兆円なので、日本人全体が投資をするだけ国の借金もなくなってしまう計算になります。このことに多くの日本人は気づくべきだと強く思います。
3.60代を迎える前に自問自答しておきたいチェックリスト
話をミクロ的な視点に戻しましょう。60代、つまり現役世代が終わる年代になるまでに一度自問自答していただきたい項目をチェックリストにしました。これらの項目にいくつ当てはまるかをチェックしていただき、当てはまる項目が多いほど「金融リテラシーが低い」と判定できますので、危機感を持っていただきたいと思います。
3-1.今の仕事、収入で果たして大丈夫ですか?
今の仕事を定年、もしくは60歳になるまで続けることに不安はないでしょうか。このことは特に、非正規雇用の方に自問自答していただきたい部分です。派遣社員など非正規で働いている方は正社員のように退職金がありませんし、身分保障もかなり不利になります。今は健康で働けていても60代が近づいてくると何が起きるか分からないのが人生です。
今の仕事、収入のまま老後を迎えるのであれば、それを補うための十分な貯蓄や投資の態勢はできているでしょうか?
3-2.「ポイント」を日常的に捨ててしまっていませんか?
キャッシュレス決済やクレジットカードなど、現金以外の支払いを日常的に行っていますか?こうした支払方法にはポイントシステムがあるので、もし「100円あたり1ポイント」なのであれば、実質的に買い物の代金が1%引きになります。これを日常的にやるかやらないかで家計は大きく変わるので、「ポイント」を大切にしましょう。
日常的に現金支払いをしていてポイントカードも何も出さないということを続けて、無意識に「ポイント」を捨ててしまっていませんでしょうか?
3-3.投資、資産運用の相談を銀行にしていませんか?
銀行の口座を持っていると、時折「オトクなお知らせ」のようなものが届きます。銀行によってはメールを使ったり、電話をかけてきて投資商品の勧誘をしてくることもあります。銀行だけでなく信用金庫や信用組合などローカルな金融機関と取引をしていると、その頻度はさらに高くなるでしょう。
こうした「銀行がおすすめしている商品」に投資してしまっていませんでしょうか?
このように誰かがおすすめしてきた商品に良いものはほとんどなく、手数料を稼ぐためだけの勧誘だと思ってください。他人にわざわざお金儲けの情報を教えてくれる人はいません。
3-4.元本保証に極度にこだわっていませんか?
日本人は長らく貯蓄を美徳としてきたので、投資で儲けることに対するアレルギーのようなものがあります。そのため元本保証ではない商品を極端に警戒する人が多いのですが、元本保証にこだわるのであれば現在、最も高金利なものであっても個人向け国債の0.05%でしょう。100万円に対して1年でつく金利は500円です。しかも税金が引かれると300円少々になります。
これを投資と呼べるかどうかは、言うまでもないでしょう。
4.前編まとめ
日本人のマネーリテラシーに対する警鐘を鳴らす意味で作成している当記事は、2部構成です。まずは状況を把握していただいたうえで、前篇を終了します。後編では「それでは、どうするべきか?」の問いに答えていきたいと思います。

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